2004年4月18日(日)「しんぶん赤旗」
イラクを侵攻・占領した米英両国が十六日、国連のブラヒミ事務総長特別顧問が示したイラク国民への主権移譲案の受け入れを表明しました。
ブラヒミ特別顧問が十四日、バグダッドで明らかにした主権移譲案は、六月末の「主権移譲」の受け皿となる暫定政権について、米主導の占領機関である連合国暫定当局(CPA)、統治評議会、イラク国内の指導者、法律家と協議したうえで決めるというもの。七月に、諮問機関的な「議会」を設立するための国民大会を開催することもうたっています。
パウエル米国務長官は八日の上院公聴会で、主権移譲は「統治評議会の拡大」が最も好ましいとの考えを示していました。その米国構想がなぜ葬られたのかについて、十五日付のワシントン・ポスト紙は、「統治評議会にたいするイラク国民支持の欠如」を指摘していました。
それ以上に重要なのは、イラク全土での戦闘激化です。とりわけ米民間人の殺害を機に米軍が、その報復としてファルージャでおこなっている無差別掃討作戦は、イラク国民の憤激を引き起こしています。
米英が受け入れたブラヒミ構想による主権移譲案は今後、アナン国連事務総長に正式に報告され、五月になって、具体案が発表される予定ですが、現地の混乱のなかで真の主権移譲につながるかどうかは今後の課題です。
また、今回の米英案は統治評議会の組み替えを提案していますが、現在の占領体制の基軸になっているCPAはそのままで、現在のイラク情勢混迷の最大の原因である占領体制そのものを変える意図は示していません。
米英は軍事占領に反対する抵抗勢力や、イラク人への「真の主権移譲」を求める勢力を「一部の過激派、テロリスト」と決め付けて軍事的に一掃する方針を変えていません。
アナン事務総長は十三日、治安が悪化している現段階では、引き揚げた国連職員を戻す考えはないと言明しました。政治的な主権移譲プロセスの中心的役割が期待されている国連が、移譲を前にしてイラクに帰還できない可能性は極めて高いのが事実です。 (ワシントン=遠藤誠二)