日本共産党

2004年4月20日(火)「しんぶん赤旗」

イラク人質事件

政府・与党幹部の「自己責任」論

専門家、識者から批判


 政府・与党の幹部から、日本人人質事件にかかわって、イラクで拘束された非政府組織(NGO)のメンバーやジャーナリストの「自己責任」を追及する発言が相次いでいます。こうした主張に、有識者や専門家、マスコミから批判があがっています。

保護は政府の責任

 作家の西木正明氏は、人質となった人々や家族への非難にたいし「極限の状況の中にあった人々に浴びせる言葉としては、たしなみにかけると言わざるをえない」と批判しています(「秋田さきがけ」十八日付)。

 西木氏は、戦火の真っただ中で戦争の実相を伝えるジャーナリストやストリートチルドレンを助けるNGOの活動について「イラクあるいは中東地域全体と日本の相互理解を深め、将来的な関係を強固なものとすることにつながる」と評価。ジャーナリストやNGOには「自らの安全を最大限確保する義務がある」としつつ、「(政府関係機関の)任務の中で、最優先事項に邦人保護があげられていることを忘れてはならない」「個人には個人の、国家には国家の役割と任務がある」とのべています。

戦争状態の責任は

 富山大学の小倉利丸教授は、「(『自己責任』論を主張している)日本政府がイラク戦争の一方の当事者である」と強調。「イラクで暮らす人々には、米軍とその連合軍によって生命を脅かされるという危険がある。日本政府の自己責任論では、イラクにある危険状態がまるで冬山登山や荒海の航海といった危険と同様にみなされていて、イラクが戦争状態になった責任が誰にあるのか、という政治・外交的な責任問題が見えにくくなっている」とのべています(「朝日」十七日付)。

 また小倉氏は「自己責任」論について、「政府がNGOの活動の安全に責任を負わないと述べたに等しい」と指摘。「政策に賛同しないNGOとその活動を、政府がどこまで手助けするのか――それがその国の政治や民主主義の成熟度を示す」とのべています。

「銃後の思想」が…

 自衛隊撤退を求めた家族の言動に対する非難について、「かつての日本をつい思い浮かべてしまう」との指摘もあります(「朝日」のコラム「窓 論説委員室から」十七日付夕刊)。

 同コラムは「この国には『期待される人質の家族像』というのがあると思った」「間違えても、政府の政策にかかわる発言は控える、というような人間像だ」と指摘。

 「個人の勝手な意見や振る舞いは『非国民』だとして許さず、国家が理想とする人間像を強いたのが戦争中の日本だった」とのべ、「まさか『銃後の思想』が復活したのではあるまいが」と皮肉っています。

背景をあいまいに

 元公明党委員長で評論家の矢野絢也氏は、「自己責任論は、本人が自覚することで、政府には保護の責任がある」と指摘。「今回の人質事件は本人の自己責任は当然あるが、一方的に自己責任論を言うことは、こういう事件が、なぜ起こったのかの背景や原因を曖昧(あいまい)にする可能性がある」(「日刊ゲンダイ」二十日付)としています。


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