2004年4月20日(火)「しんぶん赤旗」
サパテロ・スペイン新首相が、同国派遣軍のイラクからの「できるだけ短期間の撤退」を指示した背景には、米軍の占領体制下でのイラク情勢がますます悪化し、米国に協力する外国軍へのイラク国民の反対が活発化している事情があります。さらに、国連がイラクの「政治的、軍事的状況を管理する」ような国連中心の復興・支援体制を保障する安保理決議が駐留期限までに採択される見通しがまったくないためです。
サパテロ首相は、最近一カ月の動向からみて「イラクで政治的、軍事的にスペイン国民が望むような実質的な変化が予見できる証拠はない」と指摘しました。
米英首脳は十六日の会談で、ブラヒミ国連事務総長特別顧問の主権移譲案を受け入れるとする一方、占領軍の駐留を継続し、連合国暫定当局(CPA)には手をつけない姿勢を示し、占領体制そのものを変える意図は示しませんでした。
イラクでは、米ブッシュ政権が軍部隊を増派し、抵抗勢力を軍事力で押しつぶす構えです。しかし、事態はますます悪化しています。
スペイン軍は、米軍が「逮捕または殺害」を目指すイスラム教シーア派指導者サドル師が立てこもる同派の聖地ナジャフやディワニヤに展開しています。スペイン軍陣地が砲撃を受けたり、逆にスペイン軍兵士が占領抗議デモに発砲する事態が続発してきました。これまでに少なくとも十人のスペイン軍要員が死亡しており、負傷者も相次いでいます。
サパテロ首相は今回の決定について、「わが政府は民主主義への深い確信に突き動かされており、スペイン国民の意思に反した、あるいは背を向けた行動は望まないし、できない」からだとも述べました。
昨年十一月下旬にイラクで七人の情報機関員が殺害された直後、世論調査では国民のほぼ三分の二が派遣部隊の帰国を要求しました。今年三月の列車爆破テロ事件後には、全土で一千万人が「テロ反対」「平和を」とデモ行進。直後の総選挙で対米追随・戦争協力のアスナール政権にノーの審判を下しました。
イラク戦争開始一周年の三月二十日にもバルセロナで二十万人、マドリードで六万人がデモ行進。集会では選挙結果を受けて「きょうのマドリードは欧州の精神的な首都になった」との発言もなされ、撤兵実現への先駆的役割が誇りを持って語られました。
サパテロ首相はテロとのたたかいでも「国際法を厳格に尊重した国際社会のたたかいに貢献するため、今回の決定を行った」と語りました。
演説後、市民約千人がマドリード中心部に集まり、新首相の決定に喜びの歓声を上げたと報じられています。
居波保夫記者