2004年4月21日(水)「しんぶん赤旗」
「解放された人質家族への誹謗(ひぼう)中傷/官邸が中心になって“情報操作”」――。十九日発売の『週刊現代』はこのような見出しで、人質事件で政府・首相官邸が「被害者家族の素性を暴き立ててマスコミ、世論を誘導した」「官邸の調査に乗ったマスコミが『自作自演』とも読める報道をした」との記事を掲載しています。
記事は、政府が人質救出策を講じる前に警察や公安調査庁などを使って人質の思想信条を調べ、その個人情報が流れ出たと指摘。飯島勲首相秘書官が親しい記者に「まいっちゃうよ、家族の中に過激集団がいてさ」と語ったとする話を紹介しています。細田博之官房副長官がオフレコの懇談の場で「ネットに(自作自演をほのめかす)書き込みがあったようだ」などといったとも報じました。武装グループが「日本国内の人間とつながっている可能性も否定できない」などの政府関係者のコメントが一部マスコミで伝えられたことも紹介しています。
『フライデー』(四月三十日号)も、常識はずれの「自作自演」説の背後に「政府の影があった」とする記事を掲載。「ネット上に三人があたかも事件を前もって計画していたかのような情報が氾濫(はんらん)しだした。だれがあおっているのかと情報源をさぐってみると、どうやら官邸周辺」という記者の話を紹介しています。
『週刊新潮』は人格攻撃や、“家族は共産党”などと戦前の特高警察なみの発想で人質と家族を攻撃した。人質の生命や人権などどうでもいいといわんばかりの残忍なキャンペーンだ。
その役割は何か。小泉首相は最初から自衛隊の撤退を拒否し、人質を無事に帰すための選択肢を放棄した。もし人質に万一のことがあった時にこのことが問われても、「被害者もこういう人間なんだ」と思わせることで、政府の責任を軽くする。そういうキャンペーンだ。
それらの記事の“ネタ元”が、首相官邸筋だと『週刊現代』『フライデー』などが指摘している。官邸が事件発生直後から「自作自演」の仮説を立て、身元調査もした、と書いているのは注目される。
政府にしてみれば、アメリカのイラク戦争を支持し、自衛隊を派遣したという問題の根源に、国民がもう一度目を向け、考え直すのが困る。そこから目をそらせようとし、自衛隊撤退をいうような人間は「非国民」だという雰囲気をつくろうとしている。
権力が情報をしかけ、メディアが協力し、それをふれまわる人間が跋扈(ばっこ)する―。戦前の日本、赤狩り時代のアメリカがそうであった。人質へのバッシングを冷静に批判するメディアが出てきているのは重要なことだ。