日本共産党

2004年4月22日(木)「しんぶん赤旗」

人質「自己責任」論に批判広がる

各紙、識者“政府責任すり替え”


 イラクでの人質事件をめぐって、「政府の危機管理が問われる事件でありながら、矛先を被害者の『自業自得』に向けることで巧みに世論を操った」(「東京」二十一日付)として、小泉内閣や与党幹部への批判が強まりつつあります。

家族の状況を逆用

 北海道新聞二十日付のコラムは、「手のひらを返したようなバッシングにどうしても違和感を覚える」としたうえで、事件には多くの疑問があるとし、「まさか三人に対する批判が渦巻くのをいいことに、国民の視線をそらそうとしているわけではないだろうが」とのべています。

 「東京」の記事は、「個人の『自己責任論』が世間を覆う中で、見過ごされ、かき消されそうな『国家の責任』もある」と指摘。「崩れる自衛隊派遣の前提」という見出しもたて、「(自衛)隊員たちは非戦闘地域なんて信用していない。政府のへ理屈にへきえきしている」との防衛庁関係者の声を紹介しています。

 そのうえで、「自衛隊の撤退という問題が、国際的な政治問題の中でなく、国内政治の問題として出てきた。小泉首相にすれば、家族の置かれた状況を利用し、逆に『自己責任』を出すことで自らの責任をすり替えることに成功した」との川上和久・明治学院大教授の指摘を載せています。

 京都新聞十八日付には、瀬戸内寂聴さんのコラムが掲載されています。このなかで瀬戸内さんは、竹内外務事務次官の「自己責任」発言に便乗して、「自業自得」とか、「救出に税金を無駄遣いするな」といった声がわき起こったことについて、「情けないことである。日本人はいつからこんなに卑しくなったのだろう」と指摘。「彼ら(被害者)の過去の行状や、家庭のプライベートなことまで書きたてる週刊誌などが出てくると、全く国の品位が疑われて情けなさが先立つ」とのべています。

 瀬戸内さんは、そのうえで湾岸戦争直後に医療支援のボランティアでイラクを訪れた経験をふりかえりながら、「若い人々の一途な情熱をすべてためてしまっては、国は老衰するばかりであろう」と訴えています。

 中日新聞十八日付は、「冷静になって考えたい」という社説を掲載しました。

 このなかで「NGO抜きにして人道支援は語れない」「(ジャーナリストは)危険な場所を避け続けていては、国民の目と耳になれない」としたうえで、「邦人が有事に遭った時救出に全力を挙げるのは、政府としては当然の使命ではあるまいか」と指摘。「五人に沈黙を強いるとしたら、この国こそ少し危険である」と警鐘をならしています。

国民の耳目ふさぐ

 中日新聞十九日付に掲載された共同通信配信の検証記事は、「『自己責任論』によって、“戦地”からジャーナリストや非政府組織(NGO)を排除することが何をもたらすのか」として問題提起しています。

 このなかで「今回の五人も連合国や政府など『当局』が伝えない真実を伝え、取り残された子供たちに直接援助の手を差し伸べようとした。安全への配慮の足りなさに批判はあるかもしれない。ただ、『自己責任』の世論に乗る形でのジャーナリスト、支援活動家排除は、国民が自身の目と耳をふさぐ行為でもあることに留意する必要がある」としています。


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