日本共産党

2004年4月23日(金)「しんぶん赤旗」

国会の視点

年金改悪法案 首相直々の指示で

わずか3日間の審議で採決日程提案とは

世論調査 政府案の支持は2割台


 暮らしは、生涯設計はどうなるのか。そもそも公的年金とは何なのか――年金問題をめぐって高まる国民的議論を、政府・与党が封殺しようとしています。年金改悪法案の大型連休前の衆院通過を狙う与党は、衆院厚生労働委員会で参考人質疑が行われたその日に、委員会での採決日程を提案。公聴会も省き、“数の力”で強行しようとしているのです。

公聴会開かず

 「明日(二十三日)の委員会の質疑終了後、採決させてもらいたい」。参考人質疑に入る直前の二十二日午前の衆院厚労委理事会の席上、与党筆頭理事は突然言い出しました。自民党理事からは「明日、六時間審議をやれば(のべ審議時間は)三十時間を超えることになる。上(党国対幹部)からも『明日採決を提起せよ』といわれている」との声も。

 これから年金問題で参考人から意見を聞こうとしているのに、早々と採決を口にする。この“採決先にありき”は小泉純一郎首相の方針です。首相は十九日にすでに自民党の中川秀直、公明党の東順治両国対委員長らに連休前の衆院通過を指示しています。会期(六月十六日)内に成立させるため逆算した日程です。

 参考人質疑を除き、委員会では三日間しか法案の審議をしていません。年金制度の改悪をめぐる過去の審議で成立までに複数の国会をかけていることをみても、異常な審議軽視です。

 しかも政府・与党は、日本共産党など野党側が求める公聴会をいまだに開こうとしていません。

 公聴会は、「一般的関心及び目的を有する重要な案件」(国会法五一条)について開催が義務づけられているもの。それは、広く国民の意見を聞き、そこでの公述人の意見を踏まえて議論をさらに深める必要がある性格をもっているからです。

 一九八九年、九四年、九九年に年金の制度改悪が大問題になったときも公聴会が開かれ、九四年、九九年では国会から委員を派遣して地方公聴会も開かれています。

 政府・与党が「百年安心」というほどの「大改革」ならば、わずか三十時間ほどの審議で押し通すことなどできないはずです。

重大な問題次々

 そもそも政府の年金改悪法案は、厚生年金保険料を十四年連続で毎年一万円ずつ引き上げる一方、給付水準は実質15%も引き下げるもの。保険料引き上げと給付水準を国会審議抜きで毎年自動的に行えるようにする歴史的大改悪であり、七千万人の加入者、三千万人の受給者に被害が及びます。

 民主党は「年金財源」に消費税増税を充てる法案を提出していますが、「負担と給付の関係でいえば、(政府案の)保険料でやっていくのか、税、国庫でやっていくのかという一点」(枝野幸男政調会長)の違いです。大幅な国民負担を押しつけることには変わりがありません。

 わずかな審議の中でも、政府案が無年金、低額年金など生存権にかかわる問題を解決できず、民主党案では消費税率引き上げに歯止めがないなど、重大な問題が次々と浮き彫りになりました。だからこそ、さらに議論することが必要なのです。

 日本テレビの世論調査(九―十一日)では、政府案、民主党案の支持がそれぞれ二割台に対し、「どちらも支持しない」が四割を占めました。二十二日の参考人質疑でも企業負担、年金制度の空洞化問題など、さまざまな課題が指摘されています。

 国民の立場からすれば「このまま法案を決めてしまっていいのか」という状況です。採決の強行で国民の議論を封じてはなりません。

 高柳幸雄記者


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