2004年4月25日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】米紙ニューヨーク・タイムズ二十三日付は、イラクで人質になった日本人の帰国後についての記事を一面で掲載。人質は日本に帰国して「いっそう苦難」に遭っていると述べ、小泉政権は海外旅行者の身の安全を保障しようとしていないとまで指摘しています。
「イラクで人質になった日本の若い民間人は、黄色いリボンではなく、非難に満ちた、国をあげての冷たい視線のもと、今週、故国に戻った」
「(政府は)凶暴な反応を示した」
東京発の記事は、「解放された日本人 帰国しいっそう苦痛に」との見出しで、一面から国際面の半分の面を使い特集的に報道。誘拐犯に拘束されていた時期よりも帰国後のほうが受けるストレスが高いとの医師のコメントを紹介しました。
さらに、「彼らの罪は、人々が『お上』と呼ぶ政府に反抗したことだ」「彼らは犯罪者のように扱われ、事実上、自分の家に囚人のごとく隠れている」などと指摘し、異常ともいえる日本での「常識」や状況を説明しています。
人質になった人々は、日本の報道機関が危険な地域での取材を避けるなか、「真実を探しにいったフリーランサー(フリーの記者)」と「イラクのストリートチルドレンを助けにいった」非政府組織のメンバーなどで、「(誘拐犯に)生きたまま焼かれると脅された」にもかかわらず、日本の外務省は事件が起きたのは「自己責任」であると主張したとも伝えています。
記事はまた、「一つの国の政府から公的な称賛を受けた。それは米国だ」として、日本のテレビのインタビューで三人を「日本の人々は大いに誇りに思うべきだ」と述べたパウエル米国務長官の発言をとりあげ、人質を批判した福田官房長官や小池環境相の姿勢を「それとは対照的だ」と表現しました。
解放された人質がイラクで活動を続ける姿勢を示していると聞いて「日本の政府関係者が寝食忘れ努力したのに、まだそんなことが言えるのか」などと怒った小泉首相の発言についても、「米国政府からは聞かれないことだ」と批判。
「危険な地域に行くのは個人の責任と吹聴する」態度は「基本的に、(海外)旅行者は身の安全を守りトラブルから逃れるうえで政府の助けを期待してはいけないといっているようなもの」と述べ、日本政府は海外にいる国民の安全を保障しようとしていないのだと指摘しています。