2004年4月25日(日)「しんぶん赤旗」
民主党は政府の年金改悪法案をめぐり、今国会で二回の「審議拒否」を行うなど、参院選を前に与党との“対決”姿勢を強めようとしています。
「『チョウのように舞いハチのように刺す』美しさはないかもしれないが、『獅子のように舞い猛牛のように刺す』ドスンパンチをやる」
民主党の野田佳彦国対委員長は、自民党国対委員長との協議で審議拒否をとりやめ、本会議や委員会への出席を決めた十九日の記者会見で、こう説明しました。しかし、“対決”姿勢の内実はどうでしょうか。
「勇気をもって消費税を国民の皆さんにお願いする」(枝野幸男政調会長)
民主党の年金対案の最大の特徴は、二〇〇七年から現行5%に加え3%の年金目的消費税を創設すること。その時期は「〇七年度をめどに消費税を含めた抜本的税制改革を実現する」という与党税制大綱と一致します。
昨年の総選挙で民主党は、「基礎年金の財源に消費税を充て、新しい年金制度を創設する」とマニフェスト(政権公約)に盛り込みました。その具体化の年金対案で初めて消費税の引き上げを明記したのです。
また、民主党は年金改革推進本部の設置を決めた直後の三月二十五日、日本経団連の岡本康男・社会保障委員会年金改革部会長らに法案の概要を説明し理解を求めました。総選挙で経済同友会との懇談を契機に、マニフェストに消費税増税を書き込んだことをほうふつとさせます。
消費税を年金の財源に充てる民主党案については、九日の衆院本会議で次のようなやりとりがありました。
「所得の少ない人に同じく負担させる、逆進性の強い消費税によって家計に転嫁することをどう考えるか」(自民・大野功統議員)
「与党は年金改革と一体で二〇〇七年度から消費税の引き上げを合意した。民主党のみ引き上げれば逆進性が高いといわれるのか」(民主提案者・五十嵐文彦議員)
財源といえば、結局は消費税、国民にとってはどっちに転んでも踏んだりけったりの「改革」です。
枝野政調会長は「同じ給付をするためにはどこかから同じ負担が要る。だれがやっても一緒で“打ち出の小づち”はない」(九日)とのべ、消費税で財源をまかなう考えを合理化しました。
しかし、消費税増税を競い合い大企業の負担を軽くする自民党と民主党の姿に、国民は厳しい視線を注いでいます。
日本テレビの電話世論調査(四月)によれば、政府の年金改悪案と民主党案のどちらを支持するかとの問いに、政府案22・9%、民主党案22・5%とほぼ同率。ところが、「どちらも支持しない」と答えた人がそれぞれの二倍近い41・8%にものぼりました。
菅直人代表は衆院補選の応援演説で「民主党が勝てば自民党も強行採決はできない」(十六日)と強調し、補選結果を政府の年金法案廃案につなげたい考えですが、民主党の年金案でも国民の立場にたった改革は見えてきません。
自民・安倍晋三幹事長 全体的に社会保障と税の関係をみていくなかにおいては、やはり消費税の引き上げが必要になってくる(一月四日、NHK「日曜討論」) 民主・菅直人代表 景気が一定程度回復したときには、とくに基礎年金などについて消費税を充てようとすれば、いまの5%では不十分だ(同) 自民・額賀福志郎政調会長 (年金問題で)消費税のことも含めて財源を考えていきたい(三月二十一日、NHK番組) 民主・枝野幸男政調会長 (年金の)保険料を上げるのではなく、消費税ですべての人に負担してもらう(同) |
(随時掲載)