日本共産党

2004年4月25日(日)「しんぶん赤旗」

小泉内閣3年 (上)


 小泉自公内閣が発足してから二十六日で三年。国民に痛みを押しつける「構造改革」路線の一方で、米国への追随や憲法改悪へのめり込むタカ派姿勢がいっそう際立ちました。小泉内閣三年で国民の暮らし、日本の平和はどうなったのか――。


国民生活 下り坂

グラフ

 大企業に一兆三千億円の減税、庶民には一兆七千億円の増税――三年にわたる小泉内閣の税制「改革」の決算です。

 二〇〇二年度には消費税の税収がはじめて大企業などが払う法人税の税収よりも多くなりました。

 消費税増税について小泉首相は「任期中はやらない」といいます。「しかし、もうこれ以上予算を削減するのはやめてくれというときに消費税を上げるならわかる」(二十一日、衆院財務金融委員会)と消費税増税を国民にのませるために痛みを押しつけ、“もうやめてくれ”という悲鳴があがるのを待つ計算です。政府・与党は〇七年に消費税を含む「抜本的税制改革」をおこない、年金財源などに充てることで合意しています。国民より財界・大企業に顔が向く――小泉内閣三年の何よりの特徴です。

◎タカ派ぶり
【2001年】
8月靖国神社の参拝を強行(以後、毎年参拝を繰り返す)
10月テロ特措法を強行
【2002年】
12月自衛隊イージス艦をインド洋に派兵(いまだに米軍支援を継続)
【2003年】
3月イラク戦争を支持
6月有事3法を強行
7月イラク特措法を強行
8月自民党の改憲案づくりを指示
【2004年】
1月イラク特措法で戦後初めて地上部隊を派兵
◎国民の暮らし
【2002年】
10月老人医療費改悪

雇用保険料引き上げ
【2003年】
4月健保サラリーマン本人3割負担増の導入

政管健保など保険料値上げ

介護保険料引き上げ

年金給付の物価スライド凍結解除
5月発泡酒・ワインの増税

雇用保険失業給付額の削減
7月たばこ税の増税
【2004年】
1月配偶者特別控除廃止
4月消費税免税点引き下げ

介護保険料引き上げ

年金給付の物価スライド実施

失業が激増

 医療、介護、年金、雇用保険の四つの分野でおこなった「改革」は“負担を増やして給付は減らす”という改悪ばかりです。先の庶民増税を含め、内閣発足後の三年間に実行・決定済みの負担増総額は四兆三千億円。加えて二〇〇四年度予算で新たに約三兆円の負担増を押しつけています。

 「改革なくして成長なし」「痛みを恐れず」のかけ声で「不良債権」処理を加速させた結果、失業・倒産が激増しました。

 小泉内閣の三年間で、国内銀行の中小企業向け融資(貸出残高)は約五十一兆円減。内閣発足直前の〇一年三月期末で約四十一兆円だった中小企業製造業向け融資額が丸々なくなった規模です。販売不振や業界不振などによる不況型倒産は、三年連続で最悪を更新し、完全失業率は5%の高水準のままです。

 こうした実態にもかかわらず首相は「改革の芽が出てきた」。“芽”の指標は、リストラで経常利益を上げている大企業です。ここにも、財界・大企業にばかり顔を向けた小泉内閣の姿勢が浮き彫りになっています。

タカ派 右肩上がり

 「憲法改正をした方が望ましい」―歴代首相として、鳩山一郎首相以来、四十七年ぶりに改憲姿勢を公言して首相についた小泉純一郎氏。「自分の在任中は憲法改正はしない」と宣言してきた六〇年代からの慣例を大転換したものでした。

 そして三年。小泉首相は、二〇〇五年十一月という期限を切っての改憲案策定を指示するまでに至りました。首相の指示は、昨年の総選挙で「2005年、憲法改正に大きく踏みだします」という自民党の政権公約にまでなったのです。

改憲新段階

 すでに首相指示に従って自民党の憲法調査会プロジェクトチームでは改憲案作成の土台となる論点整理の素案をまとめています。そこには、自衛のための軍隊保有や集団的自衛権行使を認めるだけでなく、「誤った平和主義、人権意識への戒め」など戦後民主主義の総否定につながる内容も盛り込まれています。

写真
イラクに派兵される陸上自衛隊の隊旗授与式で訓示する小泉純一郎首相=2月1日、北海道旭川市の陸自第2師団司令部

 こうした改憲の動きは、「アメリカ発」です。「集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」とした二〇〇〇年十月の「アーミテージ報告」の要求と結びついて、アメリカの無法な戦争に日本が参加するうえで、最大の障害となっている憲法九条をとりのぞくことに最大の眼目がおかれました。小泉首相も改憲案のまとめを指示した際に「自衛隊には戦力がないのか。常識的に考えておかしい点がある」とのべ、狙いが九条にあることを認めています。

 この十年来、詭弁(きべん)を積み重ねて、強行してきた一連の海外派兵立法が“限界”に達したこともあります。

 いま開会中の国会では、自民党と競い合って〇六年までの改憲草案策定を決めている民主党の質問に対し、たがが外れたような首相の改憲発言が続きました。

 「国民的な議論も踏まえて新しくふさわしい憲法をつくっていくべきだ」(二月九日、参院イラク有事特別委)

 「国民の間に憲法の条文によって解釈が違憲、合憲と二つに分かれるのではなくて、すっきりした形で改正することで違憲論、合憲論の見方が分かれる状況はなくした方がいい」(二月十日、衆院予算委)

 憲法を軽んじる首相の姿勢は、福岡地裁で靖国神社参拝の違憲判決が出たことに「なぜ憲法違反なのか分からない」(四月七日)と繰り返し、参拝を続ける意向を強調したことにも表れています。

 アーミテージ報告 アーミテージ現米国務副長官やジョセフ・ナイ元米国防次官補ら対日政策の専門家によって二〇〇〇年十月に発表された報告書。米国防大学国家戦略研究所の特別報告で、題名は「米国と日本 成熟したパートナーシップに向けての前進」。「米国と英国との特別の関係を日米同盟のモデルとみなす」とし、日本に憲法が禁じている集団的自衛権の行使を迫りました。今年二月二日、日本で講演したアーミテージ氏は「報告で示した見通しの多くが、現実のものになった」と誇りました。

 (つづく)


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