2004年4月26日(月)「しんぶん赤旗」
外交・安全保障 |
米国のアフガン戦争支援のテロ対策特措法(二〇〇一年十月)、保守勢力の年来の願望だった有事法制(〇三年六月)、そして戦後初めて戦闘地域に地上部隊を派兵することになったイラク特措法(〇三年七月)―この三年間で小泉内閣は、歴代内閣と比較しても異例のスピードで憲法を踏み破る悪法を成立させてきました。
安全保障問題で小泉内閣が“右肩上がり”のタカ派志向を強める背景には、イラク戦争で米国をいち早く支持表明したことにみられる対米追随路線の極まりがあります。首相みずから「ブッシュの前に出るとちぎれるくらいしっぽを振るといわれている」(〇三年八月十日、タウンミーティング)と語るほどです。
イラク戦争の「大義」とされた大量破壊兵器が見つからないことを追及された首相は、苦し紛れに「フセインが見つからないからイラクにフセインがいなかったとは言えない」(〇三年六月十一日、党首討論)との珍論を展開。いまだに「発見されないとはいえない」と開き直っています。「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(地上部隊派遣)と米政府に求められるまま無法な占領を支援するため自衛隊のイラク派兵を強行しました。
「非戦闘地域」だからという派兵の口実も、全土に広がる占領軍とイラク国民との衝突で完全に崩壊しました。陸上自衛隊が駐留するサマワでも銃撃戦や砲弾が撃ち込まれる事件が起こっています。自衛隊の「人道支援」もNGO(非政府組織)よりはるかに非効率なうえ、情勢悪化で宿営地に引きこもりがちです。
さらに、スペインに続きホンジュラスやドミニカ共和国などイラク駐留部隊の撤退の動きが加速し、米英の「有志連合」が崩壊しつつあるなかで、自衛隊派兵に固執する小泉内閣の姿勢は際立っています。与党内からも「日本は米国の手先とのレッテルを張られてしまっている」(久間章生幹事長代理)と自ちょう気味に声が出る始末です。
アジア諸国の反対にかまわず靖国神社参拝を四年連続で強行した(〇一年八月十三日、〇二年四月二十一日、〇三年一月十四日、〇四年一月一日)のも、歴代首相で突出するタカ派的姿勢です。
政治とカネ |
◆01年 高祖憲治前参院議員、郵政ぐるみ選挙違反事件で議員辞職 ◆02年 鈴木宗男前衆院議員あっせん収賄事件で逮捕 加藤紘一元幹事長、秘書の公共事業口利き事件で議員辞職(昨年の総選挙で復帰) 井上裕前参院議長、秘書の公共事業口利き事件で議員辞職 ◆03年 坂井隆憲前衆院議員、政治資金規正法違反事件で逮捕 近藤浩前衆院議員、公職選挙法違反(買収)事件で逮捕 新井正則前衆院議員、公職選挙法違反(買収)事件で逮捕 ◆04年 日本歯科医師会(日歯)の診療報酬改定をめぐる贈収賄事件で自民党議員に疑惑 |
「自民党を変える」といって登場した小泉首相は、利権と腐敗にそまった自民党政治を変えてほしいという国民の期待を集めました。しかし、小泉内閣の三年は利権構造に切り込まず、金権腐敗政治もそのままでした。
首相が「改革」の目玉とした道路公団民営化も、結局は九千三百四十二キロの高速道路整備計画を前提としたものです。赤字路線も税金投入で建設する計画です。
公共事業全体でも、初年度こそ一割減をうたいましたが、補正予算などで復活。諫早湾干拓、関西空港二期工事など、ムダな公共事業は一向にやむ気配がありません。
首相は「道路族」のドン・青木幹雄参院幹事長の協力で総裁再選を果たし、政権運営でも青木氏を頼りにしています。
この三年間、自民党の加藤紘一元幹事長の公共事業口利き疑惑や鈴木宗男元衆院議員のあっせん収賄事件など、腐敗事件は後を絶ちません。首相は「疑惑は本人が説明すべきだ」と人ごとのような態度をとり、解明に背を向けてきました。
昨年総選挙での買収容疑で逮捕された近藤浩、新井正則両前衆院議員の事件では、自ら選挙応援に立ちながら「本人の自覚が足りなかったんじゃないか」とのべ、党総裁としての反省や謝罪はありませんでした。
自民党最大のスポンサー・日本歯科医師会(日歯)の診療報酬改定をめぐる贈収賄事件でも、首相は「捜査を見守りたい」とのべるだけです。
こうした根底には、政治を金でゆがめる元凶となってきた企業・団体献金を「悪ではない」という首相の姿勢があります。公共事業受注企業からの献金規制も、いったん党に検討を指示したものの、その後は「丸投げ」。自民党の「改革」案は、献金規制どころか献金者名の公開基準を五万円から二十四万円に引き上げ、情報公開に逆行する改悪案でした。
日本経団連が自民党と民主党の政策評価に応じて企業・団体献金を促進するという政策買収に乗り出したことにも、首相は「喜んで受け取ります」と歓迎しました。