2004年4月26日(月)「しんぶん赤旗」
年金保険料のムダ遣いが次から次へと明らかになっています。破たんした大型リゾート施設などにつぎ込んで大穴をあけた保険料分が、今回の改悪法案に保険料引き上げと給付削減という形で盛り込まれ、国民につけまわしされようとしています。それでも改悪法案のゴリ押しをしようというのか―。ムダ遣いの全容を改めてみてみました。 藤沢忠明記者
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「海の幸と天然温泉でリゾート気分を満喫」(青森厚生年金休暇センター=ウェルサンピア八戸、青森県八戸市)、「四季折々の料理と露天風呂からの眺めは最高」(厚生年金ハートピア武雄、佐賀県武雄市)…。
厚生労働省所管の財団法人・厚生年金事業振興団が発行するガイドブックの一節です。
厚生年金や国民年金の保険料一兆五千六百九十七億円を投じて、「加入者の福祉増進」を名目に、全国に二百六十五の年金福祉施設が次々と建設されました。
プールや屋内スケート場などを備えた民間リゾート施設と変わらないものも少なくなく、三割を超す七十七施設が累積赤字を抱えています。
たとえば、「ウェルサンピア」の愛称をつけている厚生年金休暇センター十七カ所の赤字額は二〇〇二年度で、約二十七億三千万円、「健康福祉センターサンピア」二十五カ所は同じく約二十三億八千万円といったぐあいです。
厚生年金病院など地域の医療・健康増進に欠かせない施設もありますが、政府は〇九年度をめどにすべての施設を廃止・売却する方針。膨大な焦げ付きを生む可能性が指摘されています。
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「百万坪の保養地」をうたい文句に全国十三カ所に建設された「グリーンピア」は年金積立金ムダ遣いの典型です。半分以上の七カ所で運営停止に追い込まれています。
十三カ所の建設費は計千九百十四億円で、その利子返済、維持管理費、修繕費などあわせて三千七百九十八億円が年金財政(保険料)からの持ち出しとなります。
年金保険料で全国各地に建設された施設は、それぞれ厚生労働省所管の特殊法人や公益法人に運営を委託しています。これらは、厚生省(当時)の高級官僚の天下り先確保というねらいがあり、高額な役員報酬を得ています。
たとえば、年間約二十六億円の補助金や運営委託費が注ぎ込まれている厚生年金事業振興団の理事長に厚生事務次官から天下りした吉原健二氏の報酬は年間二千二百八十二万円(〇二年度)です。
〇二年度末時点で、これらの法人で常勤役員を務めていた厚生労働省OBは計百四人。年間約十億三千五百万円の役員報酬が保険料から支払われていました。
一九九四年十二月、ときの橋本内閣が赤字国債発行をゼロにするため、社会保障費などの削減目標を設定したことにともない、九七年度から六年間の時限特例措置として年金などの保険料を社会保険庁の事務費に充当できるようにしました。
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社会保険庁は、職員宿舎の建設費、自動車購入費などにも年金保険料を使ってきましたが、これをいいことに、長官の香典、県人会への参加費などの交際費にまで支出しています。
保険料を払っていなかった女優を社会保険庁が国民年金のポスターやテレビコマーシャルに起用していたことで問題になった広告費。二〇〇三年度の年金広報費は約十億六百万円。国民年金保険料を払えない世帯が増えている現状にはメスを入れようとしないで、国民が支払った保険料で、これだけの広告費とは本末転倒です。
これまでに国民から集めた年金保険料は厚生年金と国民年金を合わせて約三百七十兆円。このうち、約五兆六千億円(1・5%)が年金の給付以外に使われました。
川崎市中原区の年金者組合中原支部の鈴木実さん(70)は「社会保険庁の車や職員宿舎まで、年金が使われる筋合いはありません。われわれの年金積立金をどこまで、使い込むのか。私たちに返すべきものは返せ、といいたい」と話しています。