2004年4月27日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】ブッシュ米政権が六月末に予定しているイラクの「主権移譲」問題をめぐる論議が米国内でも活発におこなわれています。そのなかで、「主権移譲」の受け皿としてのイラク「新政府」がきわめて限定された権限しか持たないことが次第に明らかになっています。そのなかで、米国のマスコミの間では「主権移譲といえるのかどうか」との声もあがり始めています。
米ABCテレビは二十五日、この問題をとりあげた特集番組を放映しました。そのなかで、司会者のステファノポロス氏のインタビューにこたえて、ブラヒミ国連事務総長特別顧問はこうのべました。
司会 (七月以後に)ファルージャのような事態が起きた場合、(イラク)新政府は(駐留)軍の作戦に発言権をもつのですか?
ブラヒミ それには入り込みたくありません
司会 しかし、中心的な問題ではないですか
ブラヒミ その通りですが、今それに答えるのは私の責任範囲をこえています
ブラヒミ顧問は、「主権移譲」のイラク「新政府」の構成の決定を任されている人物です。この答えかたは違和感を残しました。
ブッシュ米大統領は十三日の記者会見で、見えを切りました。「六月三十日には自由イラクの国旗が翻り、イラク当局者は政府各省の全面的責任を負う」。しかし、新政府の権限について、米政府当局者はさまざまな面できわめて限定されたものとみていることは、最近の米議会の論議で明らかにされています。
その一つのポイントが、新政府には、法律を策定する権限がないとされていることです。グロスマン国務次官は二十二日、上院外交委員会の公聴会で、国連などとの協議の結果であるとことわった上で、新政府に「立法機関(の権限は)はない」と述べました。
翌二十三日、国務省のバウチャー報道官は、記者の質問に答えて、同じ趣旨のことを強調しました。
記者 立法能力は、主権政府の基本的機能の一つではないのか
報道官 新政府は、すでに制定された暫定法のもとで、日常活動を運営する
こうしたやりとりを通じて、米国のメディアの間では、「主権移譲」後も、イラクの「主権」は制限された、とする見方が広まっています。
二十四日、ABCテレビで、司会者がパウエル国務長官に、「実際のところ、主権といえるものをもつのだろうか」と質問。パウエル長官は「主権を持つと考える。そして、その主権を認める国連決議を期待している」と答えましたが、ほとんど具体性を欠いていました。
同顧問は、先のABCの番組で、新政府は総選挙までの暫定的なものであること、その政府が、石油販売や軍事などの長期的な交渉を始めることは「われわれも、新政府も、だれもが望まない」と説明しました。
その一方でブラヒミ顧問は、米軍の存在についてこう語りました。
「(新政府は)国の責任を持たねばならないが、現実に十五万の外国軍隊がいる。それが六月三十日に消えるわけではない。一定の調整やおぜん立てが必要だ。それを制限主権と呼ぶべきかどうかは分からないが」
ブラヒミ構想の具体的内容は近日中に明らかにされるといわれます。しかし、そのなかで、ブッシュ政権は、今後少なくとも数年にわたって、イラクに米軍を駐留させることを繰り返し繰り返し強調しているのが現実です。