2004年4月28日(水)「しんぶん赤旗」
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福岡県筑豊地方の炭鉱で働き、じん肺になった患者五十七人(うち四十二人が死亡)と遺族のあわせて約二百人が、国と日鉄鉱業(東京都千代田区)に約十八億七千万円を求めた「筑豊じん肺訴訟」の上告審で、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は二十七日、国の責任を認める画期的判断を示しました。
じん肺は、炭坑掘削やトンネル工事、造船所の作業現場で吸い込んだ粉じんが、肺組織に沈着して呼吸機能が低下する職業病。結核や気管支炎などの合併症をおこしやすくなります。労働者のたたかいで一九六〇年に予防や健康管理を図るじん肺法ができました。
判決は「国がじん肺法施行の一九六○年四月以降、規制権限を直ちに行使しなかったのは、著しく合理性を欠き違法」と、国などの上告を棄却。石炭じん肺訴訟で初めて国の賠償責任を認めた二審・福岡高裁判決が、八五年の提訴から十八年余で確定しました。
裁判では、国がじん肺防止のため、適切な権限を行使したかどうかが最大の争点となり、権限不行使による賠償責任が最高裁で認められたのは初めてです。
和解なども含め、提訴時の元従業員百七十人のうち百六十七人を救済。国の賠償額は企業との連帯分を含め、約三億九千万円になりました。
原告の遺族、山田照子さん(77)=福岡県古賀市=は「最初は企業や国相手に勝てるとおもわなかった。勝利の判決を亡くなってしまった人たちにも報告できる。提訴からの苦しみがうそのようでうれしい」と語りました。
提訴から十八年余。患者となった労働者百七十人のうち百四十三人がこの世を去り、国の責任を初めて認定した二〇○一年七月の高裁判決以降も十数人が亡くなりました。
馬奈木昭雄・弁護団長は「判決で長年にわたって無法者の態度をとりつづけてきた国の責任が認められたのは画期的だ。裁判を引き伸ばしてきた国と企業に反省を迫るとともに、一日も早く、被害の救済とじん肺根絶の対策が迫られている」と訴えました。
筑豊じん肺訴訟 じん肺患者百七十人と遺族が一九八五―八七年の四次にわたり、国と大手石炭企業六社に総額五十五億円余の損害賠償を求め提訴。全国最大級の石炭じん肺訴訟で、初めて国の責任を追及しました。福岡地裁飯塚支部は九五年七月、国の責任を否定し六社に総額約十九億六千九百万円の賠償を命令。控訴審段階で企業三社と和解が成立しました。福岡高裁は二○○一年七月、国の責任を初めて認め、残り三社と合わせて総額約十九億一千二百万円の賠償を命じました。国と企業は上告しましたが三社のうち二社は○二年八月、原告側と和解しました。