日本共産党

2004年4月30日(金)「しんぶん赤旗」

シリーズ 保守「2大政党」づくりの断面

財界の狙い

カネと小選挙区制をテコに


 「これまでの政権が手をつけてこなかった問題に切り込み、踏み込んでやっている」

 日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)は十二日の記者会見で小泉自・公内閣に最大級の評価をおくりました。二年前、奥田氏が日本経団連会長に就任して間もない会見で「十五点ぐらいになったかな」といった低い評価から一変しました。

日本経団連の政党“通信簿”
自民、民主への“総評”

 ●自民党

 「(総選挙での)政権公約は、具体策が明示されない分野はあるものの、(日本経団連が示した)優先政策事項の方向とほぼ一致している」

 「55年の結党以来、ほぼ一貫して与党の立場にあり、政策立案・推進の面で基礎的な能力は高い」

 「企業の政治寄付についての考え方は経団連と一致し、政治資金の透明性向上のための経団連要望に応える方針」

 ●民主党

 「(総選挙での)政権公約には、規制・行政改革、住宅政策など、(日本経団連が示した)優先政策事項の方向に沿う政策も見られる反面、環境政策、雇用政策など方向の違いがある政策も見られる。責任政党を意識して、党独自の予算案、税制改正案、法案などを通常国会に向けて、準備する動きもあるが、現時点では、具体的な内容が不明確なものも多い」

 「企業の政治寄付に関する考えは、一部に経団連と違う面があるが、必要性は認めている。企業寄付は、党のシンクタンク運営資金に充てるなど、政策の立案・推進に充てるという経団連要望に応える方針」

基盤崩壊

 しかし、財界から賛辞が与えられても、小泉「構造改革」は国民との関係では矛盾を拡大しました。大企業のリストラを応援し、中小企業つぶしにつながった不良債権最終処理などを強行。自民党の支持基盤を揺るがしています。日本経団連の事務局幹部は、「自民党は都市部で票がとれなくなってしまった」ともらします。自民党の基盤崩壊によく気付いているのも財界自身です。

 この危機感を背景に、カネの力で政治に介入しようというのが奥田氏の会長就任以来の戦略。懸案となっていた企業献金の「あっせん」再開をてこに保守「二大政党」制を仕掛けようとしているのです。日本経団連は今年一月二十八日、企業献金の指標となる政党“通信簿”を発表。会見で奥田会長は、「自民八十五点、民主は五十点以下」とのべました。

受け皿を

 実は、会見直前の舞台裏では、事務局側が奥田会長に、「自民対民主の(点数の)格差は五対一」と説明していたといいます。民主に「甘い」点数をつけた奥田会長の発言は「民主にリップサービスをしたもの」との受け止めが関係者の間に広がりました。

 ある財界ジャーナリストはこう解説します。

 「奥田さんは、根っからの二大政党論者ですからね。自民党が政権から下野したときの受け皿としての民主党を考えている」

 企業献金を出すさい経営者の懸念材料は、法的問題をいかに回避するかです。“通信簿”発表から二カ月後の三月二十三日。日本経団連は、弁護士を招いて「企業の政治寄付と株主への対応」という講演会を開催しました。企業献金について株主にどう説明するかに関心が集まり、二月に行った会員企業への“通信簿”説明会よりも二倍近い約五百人が参加しました。

 講演の中では、政治献金を行う際の企業の経営判断のポイントとして、「日本経団連の政党評価など具体的な判断の前提となる事実を十分認識すること」があげられました。

検証大会も

 日本経団連が金に飽かして「人為的」に舞台づくりに励む一方、保守「二大政党」づくりへ選挙制度改変の旗を振っているのが経済同友会です。二〇〇二年十月に「真に政権交代を可能にする選挙制度として『単純小選挙区』の導入」を要求。今年三月十五日にも「政権交代可能な二大政党制への流れを促進するためにも(略)、完全小選挙区制への早期移行を進めるべきである」と提言しました。

 五月には、日本経団連、経済同友会などが参加してマニフェスト(政権公約)がどれだけ実現しているのか、第一回の検証大会も開かれます。

 〇三年の正月に日本経団連が発表した「奥田ビジョン」はこういいます。

 「日本の企業のみならず、海外の企業が国内で事業を行うことを選択するよう、日本が二十一世紀の国際制度間競争に勝利すること」

 規制緩和や税制改革、通商協定など多国籍企業本位の国づくりを早急にやりきることは財界にとって喫緊の課題です。そのためには、国民の反発を受けて政権が交代しても、政策に変化がない保守「二大政党」制の確立が欠かせないのです。

 (随時掲載)


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