2004年5月1日(土)「しんぶん赤旗」
厚生労働省が支援費制度と介護保険との統合を検討しているのは、支援費制度の利用を少なく見込み、財政破たんに直面していることが最大の動機です。
支援費制度は、障害者本人がサービス提供の事業者と契約し、本人負担を除いた費用を国と自治体が「支援費」として助成するしくみです。「障害者がサービスを自分で選び、自由に受けられる」ことをかかげ、昨年四月にスタートしたばかりです。それまで国と自治体がサービス提供に直接責任を負っていた「措置制度」に代わる制度として、厚労省は制度の普及につとめていました。
ところが、開始早々からホームヘルプを中心にしたサービス利用の急増で予算不足が表面化。結局、当初予算額(在宅サービス分)の五百十六億円にたいし、実際にかかった国庫負担は百二十八億円も超過。〇四年度も予算不足が見込まれる異常事態となっています。
厚労省は、この予算不足を解決するどころか、小泉内閣の「三位一体改革」による補助金削減の推進を迫られるなかで、介護保険との統合を急浮上させました。
支援費と介護保険の両制度は、利用者が事業者と契約し、サービスの提供を受ける点では共通しています。しかし、財源やサービス内容、利用者負担のあり方などは、大きく異なります。
支援費の財源は、国が二分の一、都道府県と市町村が四分の一ずつ負担しています。一人ひとりの障害に合わせてサービスの必要量が決まり、提供量に上限はありません。利用者負担は、本人の所得に応じた額(応能負担)となっています。
一方、介護保険は、国と地方の負担は給付費の半分ですみます。残り半分は四十歳以上が支払う保険料でまかなわれます。要介護度ごとに利用の上限(支給限度額)が設けられています。最も重い要介護五でも、利用できるホームヘルプは一日三―四時間。在宅サービスを利用した場合は、原則として費用の一割を利用料として事業者に支払います(応益負担)。
全国自立生活センター協議会の緊急アンケート(二―三月に実施)では、84・5%が統合に「反対」と回答しました。その理由は、“同じホームヘルプでも高齢者と障害者では介護ニーズが根本的に違う”が最も多い意見です。“長時間介助を必要とする重度障害者の暮らしはどうなるのか”“保険料や一割の利用料を払えない”との声も多数寄せられています。
地方自治体も、反対や慎重な検討を国に求める意見を表明しています。
厚労省は当初、六月まで統合の方向性をまとめる予定でしたが、社会保障審議会介護保険部会は八月まで先送り。統合は、両制度の根幹にもかかわる問題であり、障害者の声を十分にくみ取ることが不可欠です。拙速な議論で統合を決めることがあってはなりません。江刺尚子記者