2004年5月3日(月)「しんぶん赤旗」
政府・与党は、国民に大幅な負担増と給付減を強いる年金改悪法案の連休明け衆院通過を狙う一方、今後の年金審議もにらみ社会保障制度全般のあり方を検討する協議機関を設置する方針です。小泉純一郎首相が四月二十六日の政府与党連絡会議で表明しました。
首相は同日、奥田碩日本経団連会長、笹森清連合会長と会談。両氏から二〇〇七年度の税制「改革」に合わせて社会保障全体について税・保険料を一体で見直すよう要請を受けました。
これを受けて首相は、「日本社会を支える企業集団の日本経団連と、労働者の大きな団体である連合ともに似たように提案をしてきた。これは重い。民主党も合意できるような案が将来できないか」(四月二十六日のNHK番組)とのべ、民主党にも協議を呼びかける意向を示しました。
四月二十八日の与野党国対委員長会談では、自民党の中川秀直国対委員長が「政党の利害を超えて将来の負担と給付について協議すべきことだ」とのべ、社会保障制度全般を議論する協議機関の設置を提案。日本共産党はじめ野党側は反対し、合意に至りませんでした。
首相から野党第一党への協議呼びかけで思い起こされるのが〇三年の有事法制の強行です。前年の〇二年にいったん廃案になった直後から、政府・与党は民主党を「修正」協議に引き込んで成立させるための論点整理などを行い、〇三年の「修正」合意と採決につながりました。
政府・与党は、〇七年度をめどに年金の財源などに消費税増税を充てることで合意しています。年金財源で同じく消費税増税を打ち出している民主党を引き込み、社会保障の財源を消費税増税で賄っていく流れを強めようとするものです。
首相は、民主党が主張する「年金制度一元化」についても審議のなかで言及しており、一元化を民主党への呼び水として協議のテーブルにつかせる可能性もあります。
有事法制や社会保障など国の将来を左右する重大課題で、与党が野党第一党を改悪の方向に引き込み、国民不在の場で悪法を加速させようという動きがあれば看過できない問題です。今後注視していく必要があります。