2004年5月3日(月)「しんぶん赤旗」
総選挙で自民党と民主党が改憲を公約して以来、両党は憲法改悪を競い合っています。自民、公明間では改憲の発議権を持つ国会の常任委員会設置を論議することで一致しました。
衆院憲法調査会の中山太郎会長は、同様の委員会設置を前提に「今年七月の参院選では、国民は当選者に憲法改正を発議する権利を与えることに必ずなる」(「東京」四月二十日付)とのべています。改憲を許すのかどうかは、まさに参院選の一大争点になります。
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自民党は党憲法調査会のなかに「憲法改正プロジェクトチーム」(座長・杉浦正健衆院議員)を設置。各条ごとに改憲案を論議し、四月十五日には論点整理の素案をまとめました。
素案では、憲法前文に盛り込むべき内容として「わが国の歴史・伝統・文化・国柄、健全な愛国心」「誤った平和主義、人権意識への戒め」などが列挙されています。条文の字句の追加や削除にとどまらず、前文を含め憲法全体を丸ごと書き換えようというのです。
そのなかでも、前文の書き換えにあたって複数議員から素案に「第九条の見直しを反映させる」との意見がある通り、改憲の照準を定めているのは第九条です。
第九条は、戦争放棄と戦力、交戦権の否認を定めています。これにたいし、素案では集団的自衛権の行使を改憲で可能にすべきだとの意見が相次ぎました。
「自衛のため、国際協力のための軍隊は必要」
「個別的・集団的自衛権があり得ると認めるのが当たり前」
「集団的自衛権を保持しているが行使できないという内閣法制局の解釈は承知できない」――。 米国の無法な戦争に自由に参戦できるように最大の障害である九条を取り払おうというのです。
「官僚主権から国民主権の国にするためには、市民革命に代わる幅広い憲法制定運動が必要だ。民主党は日本のあるべき姿を示す新たな憲法を創(つく)る『創憲』を主導し、二〇〇六年までに新たな憲法のあり方を国民に示したい」
民主党の菅直人代表は一月の党大会でこうあいさつし、自民党と改憲の“主導権”を争う姿勢を示しました。
同党は総選挙後初めて開いた二月四日の党憲法調査会(会長・仙谷由人衆院議員)で、鳩山由紀夫前代表のもとでまとめられた同調査会報告(〇二年七月)と、合併した旧自由党の「新しい憲法を創る基本方針」を議論の俎上(そじょう)に載せることを決めました。
報告では「集団安全保障活動への参加」を可能にするための選択肢として▽憲法解釈変更▽安全保障基本法などで規定▽憲法条文改正―を検討すべきとしています。
自民、民主両党が改憲のスピードを競い合うなか、公明党も改憲“競争”に乗り遅れまいと作業を急いでいます。今年秋の党大会で改憲の意見集約をする予定でしたが、「参院選を前にして各党の動きをみながら、場合によっては六月をめどに論点整理を行いたい」(神崎武法代表、二月十二日)と前倒ししました。
神崎氏は「憲法9条、特に集団的自衛権行使の問題が憲法改正における一つの大きな論点であることは承知している。公明党も、9条問題を議論する中で、その点も含めて議論している」(公明新聞一日付)と九条に焦点をあてています。
最近の公明新聞紙上では「解釈改憲」を否定し、憲法九条を変える必要性があるという識者を登場させ(四月二十六、二十七日付)キャンペーンを図っています。