日本共産党

2004年5月3日(月)「しんぶん赤旗」

21世紀の進路示す憲法

米国発の改憲策動

追随は「世界で孤立」の道


 三日は、五十七回目の憲法記念日です。自民、民主、公明各党による改憲策動のかつてない強まり、戦後はじめての自衛隊の戦地派兵…。日本を「戦争をする国」にしていいのか。いま、日本の国のあり方、すすむべき方向が問われています。


同盟の障害物と米国務副長官

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憲法9条を守ろうとデモ行進するメーデー参加者=1日、東京・渋谷区

 「血を流せ」「旗幟(きし)を鮮明にせよ」「地上部隊の派遣を」――。一九九〇年代以降、日米同盟が極東からアジア・太平洋、さらに地球規模に拡大されるのに伴い、米国は自衛隊の海外派兵を次々に要求しました。PKO(国連平和維持活動)での相次ぐ派兵、インド洋、イラクへの派兵と、自衛隊の海外派兵は拡大の一途をたどっています。

 しかし、政府は一連の派兵を「憲法の範囲内」とごまかしてきたため、「武力行使との一体化」の回避を建前とするなど、自衛隊の行動には大きな“制約”が課せられています。また、海外派兵のたびに個別法をつくらなくてはならず、即応性・柔軟性を重視する米軍戦略とも矛盾します。

 「日本の憲法が(集団的自衛権の行使を)禁止していることが、多かれ少なかれ、同盟協力の障害物になっている」。アーミテージ米国務副長官は二月、都内の講演で現状への不満を表明し、憲法改悪に向けた議論を要求しました。

 自民党の中谷元・前防衛庁長官は、「九条に関しては、現実を解釈の理念で取りつくろう手法を重ねてきたが、憲法という国家の基本法の軽視と形がい化を生み出す危険水域に入っている」(二月五日、衆院憲法調査会)とのべました。米側の要求に本格的にこたえるためには九条改悪しかない、との認識です。

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血流す同盟へ世界でも突出

 米国は、なぜいま憲法改悪の要求を強めているのでしょうか。

 アーミテージ副長官が二〇〇〇年に作成した報告書では、「米国と英国との特別な関係を日米同盟のモデルとみなす」とのべています。

 イラク占領支援だけでなく、イラク侵略戦争をたたかった英国のように、米国の無法な戦争にも参戦する――日米同盟を「血を流す同盟」にするために憲法改悪を求めているのです。自民党の安倍晋三幹事長も「軍事同盟とは“血の同盟”」というのが持論です。

 しかし、歴史的に見れば米国の軍事同盟の網の目は破れつつあります。

 アジア・太平洋地域には東南アジア相互防衛条約(SEATO)が存在しましたが、ベトナム戦争終了後の七五年に解体。フィリピンは九二年に米軍基地を撤去しました。韓国でも米軍基地の縮小・撤去を求める世論が大きく高まり、米国は基地削減を検討せざるをえなくなりました。

 欧州ではどうでしょうか。仏・独など複数のNATO(北大西洋条約機構)加盟国が米英のイラク侵略・占領に反対し、スペインもイラクからの部隊撤収を開始しました。米国は無法な侵略・干渉戦争を繰り返すたびに足場を失い、孤立化の道を歩んでいるのです。

 このなかにあって、世界でも突出して米国への追随を続けているのが日本の小泉政権です。

 憲法を改悪し、際限のない日米軍事一体化を進めるのか、戦争放棄・戦力不保持を掲げた憲法の精神で、戦争のない平和な世界をつくるために貢献するのかが問われています。


米国の戦後主要軍事同盟の現状

 日米安保条約  地球規模に拡大・強化

 米・フィリピン相互防衛条約  92年に基地撤去

 米韓相互防衛条約  在韓基地削減の動き

 SEATO(東南アジア防衛条約機構)  75年に解体

 ANZUS(米・豪・ニュージーランド)条約  86年以降、機能停止

 全米相互援助条約(中南米)  89年以降、機能停止

 NATO(北大西洋条約機構)  イラク戦争で内部に亀裂


共産党 国づくりに生かす

 「憲法は古くさい」「制定してから半世紀以上たつから変えよう」―改憲派からはこんな合唱が聞こえてきます。果たしてそうでしょうか。

 いまの憲法には、二十一世紀に日本がすすむべき道がしっかりと書きこまれています。

 たとえば、前文です。小泉首相はイラク派兵の合理化に前文を引用しましたが、中身はまったく逆です。

 前文には、(1)侵略戦争への反省―とくに「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起る」ことのないように決意したこと(2)国際的な平和のルールにのっとって国際紛争の平和的解決に徹すること(3)世界のすべての国の主権を尊重し、平和共存をめざすこと―などが書きこまれています。

 自民党は、改憲に向けた論点整理素案で「日本が目指すべき方向及び理念を示す」としましたが、いまの憲法に盛り込まれたこの方向と理念こそ、二十一世紀に日本がすすむべき道ではないでしょうか。

 また、憲法二五条には、国民は「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利があり、国は「社会保障」の向上・増進に努めなければならないとしています。この「生存権」の規定は、サミット(主要国首脳会議)参加国でも日本とイタリア以外にありません。

 男女同権についても、憲法は「同等の権利」「両性の本質的平等」を規定し、それにもとづいて家族関係などの法律を制定しなければならないとしています。この点でも、世界の進歩的な流れを取りいれられる内容をもっています。

 日本共産党は、こうした値打ちをもつ憲法を、二十一世紀の日本の国づくりに生かそうとしています。


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