2004年5月3日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】「名前のなかった数字の身元が明らかになった。ありがとう」「ブッシュ大統領が、倒れた兵士の葬儀に一度も出席していないのはなぜなのだ」
米ABCテレビは四月三十日、ニュース特集番組「ナイトライン」の特別番組で、イラク戦争で犠牲になった七百人余りの米兵士の名前を、一人ずつ読み上げました。それ以降、同テレビのホームページには視聴者の書き込みが続いています。
この番組で、キャスターのテッド・コッペル氏は、犠牲になった兵士の名前と年齢、生まれ故郷、所属部隊を読み上げました。顔写真の代わりに、星条旗に包まれたひつぎが映された兵士もあります。
物議をかもした番組でした。地方放送局を抱えるシンクレア放送グループはその前日、傘下のABC系列局に対し、放送の中止を指示。「(番組は)イラクでの米国の努力を掘り崩そうとする政治的意図に基づく」と非難しました。
同放送グループは与党・共和党への支持を隠さないタカ派。同グループの姿勢には、共和党のマケイン上院議員さえ、戦争犠牲者を悼むことを妨げるべきでないと、抗議の書簡を送っています。
放送に先立って、コッペル氏は「ジャーナリストにできる最も大事なことは、戦争の犠牲を人々に気づかせることだと思う」と語っていました。
放送された同じ日、ワシントン・ポスト紙も死亡した兵士の写真を掲載。「バグダッド市内でロケット推進りゅう弾を被弾」などと、短く状況を示しました。
ブッシュ大統領が空母リンカーンの艦上で「主要な戦闘の終結」を誇らしげに宣言してから、五月一日で一年。四月は、米兵の死者数が百三十人を超え、月間の犠牲者数として開戦以来最大になりました。
「命が失われれば、国民は疑問を抱き始め、世論調査にも反映する」―。パウエル米国務長官は二十九日、滞在先のデンマークでこう語りました。
同日付のニューヨーク・タイムズ紙は「戦争への支持、急激に低下」との見出しで、世論調査の結果を伝えました。
犠牲者の名前を読み上げる活動は、イラク戦争反対の集会でも行われています。そこでは、米兵はもとより、戦争で犠牲になったイラク市民の名前も、できる限り伝えようと呼びかけられています。