2004年5月5日(水)「しんぶん赤旗」
おぞましいニュースが世界を震撼(しんかん)させています。イラクを侵略し無法な占領支配を続け、いままた新たな戦争行為を実行している米軍が、捕らえたイラク人に対し残虐な拷問や陵辱行為を組織的に行っていることが明らかになったのです。驚きとともに、これこそ野蛮な占領者の本質を示すものだとの怒りや非難、国際機関の手で真実を明らかにせよなどの声が、各国政府、メディア、国際機関から一斉にあがっています。
被害者は誰か |
収容者の中身 |
ブッシュ政権や米軍は収容者を「テロリストや過激派だ」といいます。しかし実際には、米軍は、昨年から「○○作戦」と称して、夜間に市民の家を襲い、男性とみれば引きたててくるということを繰り返してきました。ほとんどが一般市民といいます。アブグレイブ収容所に拘束されているイラク人の多くはそういう人たちです。今回米軍がつくった報告書も、六割は「テロリストとは関係のない」市民だといっています。
米紙ワシントン・ポスト(三日付)は、バグダッドで米軍に拘束されて最近釈放された数人の市民に取材しています。その一人、ムワファク・サミ・アッバスさんは三月のある深夜に米兵に襲われ、連行、拘束され、米軍憲兵によって、「反米活動をやっていることを認め、仲間の名を明かせ」と日夜拷問を受けました。同じ日に捕まった三人の兄弟はまだ釈放されていません。
同様に、今回の報告書にあるような拷問と陵辱を受けた青年が、「この恨みは忘れない。米軍に絶対に復しゅうする」と語ったと報じた米紙もあります。これらの証言からは、米軍のこうした拷問や虐待がイラク各地にある米軍の収容所で行われていることも明らかになっています。
誰がやっている? |
CIAなど組織関与 |
アブグレイブ収容所で虐待が行われていたのは全部で二十四以上ある監房のうちの一つ。担当していたのは第三七二憲兵中隊ですが、ほかに軍情報部と米中央情報局(CIA)の関係者が多数出入りしていたこと、拷問には通訳なども含めて二つの民間組織の要員(一人はクウェートの軍服を着ていた)も加わっていたことも明らかにされています。
CIAは、この事件が明るみに出てから、「この事件にCIAがからんでいたことを示す直接の証拠はない」と開き直っています。しかしこれまでに明らかになっている実態からすれば、系統的、組織的に行われていたことは関係者が証言しています。明らかにされた報告書も、そのことを物語っています。
三日、アブグレイブ収容所での虐待に直接かかわった七人にたいする処分が発表されました。しかし、問題は彼らの背後にいる軍とCIA上層部の責任を明らかにすることです。
開き直る軍、大統領 |
解放戦争のうそ示す |
ブッシュ大統領は、この事態について「不快だ」「責任者を処罰する」と言いましたが、「これはごく一部の者のしわざ」とも述べています。またマイヤーズ統合参謀本部議長もテレビで同様のことをいい、「組織的ではない」と否定しようとしました。しかし、逆に「組織的ではない証拠はあるのか」とただされて「確信はない」と言う始末でした。
こうした蛮行や殺害行為が決して個人の思いつきの産物でないことは明白です。
今、中東アラブ各国をはじめ世界世論は厳しい批判・非難の声をあげています。「虐待は侵略者の体質そのものを暴露した」とはアラブ世界の人々の共通の声です。蛮行は、「イラク解放のための戦争」というブッシュ大統領のうそをもっとも明確に示すものとなっています。
それは、あれこれ釈明はするがイラク国民に謝罪のひとつもしないブッシュ大統領とその政権、米軍の態度にいっそう明らかです。
何がおこなわれたのか |
拷問で殺し、放棄も |
イラク占領米軍のサンチェス司令官の指示でつくられた報告を入手した米国の雑誌『ニューヨーカー』やロサンゼルス・タイムズ紙その他の報道が明らかにしたのは、昨年十月から十二月にかけて、バグダッドの西約五十キロのアブグレイブにある収容所での出来事です。同収容所は、かつてのフセイン政権当時の悪名高い刑務所。米軍はここに最大七千人ともいわれるイラク人を拘束し、以下のような残虐な行為を行っていたのでした。
リンを含む液体をかける/裸にして冷水をあびせる/ほうきの柄やいすでなぐる/男性にたいしてレイプするぞと脅す/ほうきの柄で性的暴行を行う/裸の男性収容者に女性用下着をはかせる/複数の男性収容者を裸にして集め、性的陵辱行為を行う/裸の男性収容者数人で人間ピラミッドをつくらせる/収容者の手と足に電気コードをつないで箱の上に立たせ処刑すると脅す/女性収容者を裸にする/横になって寝ることもできないような狭い箱のような部屋に閉じ込めて水も与えず、トイレにもゆかせない/軍用犬をけしかける…。
それだけではありません。拷問の結果、死亡したイラク人を袋につめて氷づけにし、その後放棄したことも報告されています。別の関係者の証言によれば、拷問で殺されたイラク人はかなりの数にのぼるといいます。
彼らは、拷問や虐待の様子をビデオ、写真にとっていました。なかには、裸の人間ピラミッドを前に男女の兵士が笑っていたり、女性兵士が笑いながら裸の男性を指さしたり…。