2004年5月5日(水)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】イラクを占領している米軍が、フセイン元政権によるイラク人虐待の象徴であったアブグレイブ刑務所のなかで、拘束したイラク人を拷問していたことが発覚したことで、イラク侵攻で「フセインの拷問室はもはや無くなった」と豪語していたブッシュ政権が一転、糾弾の対象になりました。
大統領は三日、ラムズフェルド国防長官に関係者の処罰と徹底調査を要請しました。
三日付のニューヨーク・タイムズ紙は、入手した米陸軍の内部調査報告書に基づいて、収容所に軍情報部が介入したことで司令系統が乱れ、問題が起きたと伝えました。
米兵による収容所でのイラク人虐待は、今年になって暴露された問題ではありません。昨年夏には「アムネスティ・インタナショナル」が、アブグレイブなどイラク国内の収容所で、劣悪な環境のもとジュネーブ条約に違反する拷問・暴行がおこなわれていると、連合国暫定当局(CPA)に改善を求めています。
ニューヨーク・タイムズ紙三日付の社説は、「悪い夢になりつつあるイラク侵攻で、これ以上の悪夢はない」と、この問題がブッシュ政権にとってかなりの打撃になると指摘。同時に「少しの悪いリンゴ(者)を非難する以上のことをやらなければならない」として、米軍、情報部全体の責任追及を行う必要性を説いています。
イラク系米国人でワシントンを拠点に活動する平和運動家のアナス・シャラル氏は、「この恐ろしい虐待の事実は、失いつつあった米部隊にたいする信用がこれでおしまいになったことを意味する。組織的な犯行であることは確かであり、この事件を一過性の問題に終わらせてはいけない」とのべています。