日本共産党

2004年5月8日(土)「しんぶん赤旗」

福田官房長官辞任

年金改悪押付け最優先
“未納”幕引き許されぬ


 「政治に対する国民の信頼を失ったことは慙愧(ざんき)に堪えない」「政治不信を増幅してしまったことを国民の皆様におわび申し上げたい」―福田康夫官房長官が七日の辞任表明でのべた言葉です。国民年金保険料の未納問題がそれほど重大な問題だと認識しているのなら、なぜ自らの未納が発覚したときに責任をとってやめなかったのか。殊勝な発言とは裏腹に、福田長官のこの間の言動は、歴史的な年金改悪法案を国民におしつける思惑だけが先行したものでした。

辞任は当然だが首相責任も重大

 国民に十数年間にわたる負担増と給付減をおしつける年金改悪法案。そのとりまとめ役である官房長官自身が保険料を支払っていなかったことが発覚した以上、辞任は当然です。

 二月四日の与党年金制度協議会での最終合意では、深刻な国民年金保険料未納問題について「制度に対する信頼を損ない、社会連帯に基づく制度の根幹にかかわる重大問題」と明記。今回の年金改悪法案では、財産差し押さえをテコにした未納者への強圧的な保険料取り立てのための具体策をもりこんでいました。

 国民には強制徴収までおこないながら、法案に署名した閣僚が保険料未納では法案提出の資格さえ欠いていることは明らかです。

 小泉純一郎首相は、福田氏の辞任を了承する一方で、他の六人の保険料未納閣僚には閣内にとどまるよう指示しました。「内閣の大番頭として、代表して責任をとった」(中川秀直・自民党国対委員長)との声もあります。しかし、官房長官辞任で未納問題に幕引きをすることは許されません。「うっかりミス」などと未納閣僚をかばってきた小泉首相の責任も重大です。

希代の悪法推進「国会対策」露骨

 重大なのは、福田氏が年金改悪という歴史的悪法を通すための「国会対策」を最優先にして、自らと一部閣僚の未納問題を隠ぺいしてきたことです。

 福田氏は、三閣僚の未納が発覚した当初(四月二十三日)には「六十歳当時は納付している」とした以外は「個人の情報をいう必要はない」と公表を拒否しました。その後の会見では「社会保険庁に調査を依頼して二十三日夕に知った」(二十八日)とのべており、早くから自らの未納を把握しながら国民には黙っていたのです。

 その理由を、福田氏は「いま国会で法案を通すか通さないかという瀬戸際のときに、与党の方に苦労してやってくれているわけですよ。そういうことも考えなければならない」(二十八日夜)とのべ、「国会対策」のためであったことを露骨に表明しました。その過程では、「月曜日(二十六日)には(全閣僚の納付状況について衆院厚生労働委員会に)提出したい」(坂口力厚労相、二十三日)という言明までほごにしたのです。

 官房長官辞任も、法案の「出口」まで国会におしつけた自民、公明、民主の三党合意を待っての表明でした。徹頭徹尾、年金保険料の自動引き上げという希代の悪法を通すための出処進退というほかありません。

 そこには、未納問題で「けじめ」をつけるかのような姿勢をみせながら、参院選に向けて国民の支持をつなぎとめようという思惑も感じられます。しかし、未納問題を放置したまま国民の半数以上が反対する悪法をごり押しすればするほど、国民との矛盾の激化は避けられません。

 藤田健記者


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