2004年5月9日(日)「しんぶん赤旗」
年金改悪法案の「修正」で合意した自民、民主、公明の三党は、十一日の衆院本会議で採決し衆院を通過させようとしています。しかし、政府案の問題点を何ら是正せず、消費税増税に道を開く危険性をはらんだ「三党合意」には批判が相次いでいます。このまま、政府が提出した年金改悪法案を衆院通過させていいのか――。
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「これだけ問題、欠陥がありそうな法案だということが国民に分かってきたなかでも、いろいろな事項を付け加えた上で通しちゃうということで、野党第一党としていいんですか」。七日夜放映された民放ニュース番組の古舘伊知郎キャスターは、こう菅直人・民主党代表につめよりました。
全国紙でも「年金政府案は白紙に戻せ」(八日付「毎日」)と社説に掲げるなど、政府案そのものの撤回を求める声があがっています。三党合意は、その政府案の最大の問題点である保険料の十年以上の連続引き上げ、給付水準の自動的な切り下げにはまったく手をつけていません。
七日の衆院厚労委員会で日本共産党の山口富男議員が、三党合意について「財源として消費税を入れる道を開くものだ」と追及したのにたいし、小泉首相は「与野党協議で大きな議論になる」と否定しませんでした。
「菅氏は6日夜、連合の笹森清会長に『連合と日本経団連の求めている方向で3党合意が取れた』と説明した」(八日付「朝日」十三版)と報じられたように、三党合意は企業の社会保障負担の軽減と消費税増税を求める財界の要求を代弁するものなのです。
七日の衆院厚労委の審議日程案には、三党合意を国会に押しつける内容の「委員会決議」を採決することが明記されていました。
ところが、三党合意は民主党内からも「少なくとも過半数の議員は強く反対している」(藤井裕久常任幹事)と異論が続出。「次の内閣」でも三度も仕切り直したものの了承は得られませんでした。
同日の衆院厚労委質疑のなかでも、合意の当事者の民主党議員から「国民の理解を得るのは難しいと分かりながら、あえて合意に臨んだ」(民主党年金案の提出者・古川元久議員)、「中身もあり方も非常に不満だ」(増子輝彦議員)との発言が出て、結局、委員会決議の採決は見送られました。三党合意は早くも破たんに直面しています。
政府は保険料未納が発覚した福田康夫官房長官の辞任で幕引きをはかる姿勢です。
三党合意は国会議員の年金納付状況の公表にふれていません。
自民党は納付状況を公表しないと早々と決定。公明党は神崎武法代表が八日夜の講演で「党内できちっと調査し、もし未納議員がいたら事情を聴いた上で処分してその結果を公表したい」とのべました。
国民注視の未納問題への対応を避けたり、その状況を放置したまま年金法案の衆院通過をはかるのでは、国民の納得は得られません。