日本共産党

2004年5月9日(日)「しんぶん赤旗」

厚生年金

新規法人2割未加入

不況下で保険料負担重く


グラフ

 二〇〇二年度に新しくできた法人(株式会社などの営利法人や財団法人などを含む)の二割近くが厚生年金に加入していないことが、八日までに社会保険庁の調査で判明しました。厚生年金の加入者数の伸びが政府の見通しを下回るなど、制度の空洞化が問題になっていますが、未加入法人の広がりが数字で明らかになったのは初めてです。

 社会保険庁は、登記簿などから、九万五千九百九十五の〇二年度新規法人を把握。各法人に文書で厚生年金への加入を呼びかけたのち、三万七千八百六十一法人に社会保険労務士が巡回指導をおこないました。このうちの一万七千百九十三法人(17・9%)が本来、適用対象であるのに、厚生年金に未加入であることが判明したものです。

 厚生年金に入ると、従業員の月給、ボーナスの13・58%(現行)を保険料として納めることになります。使用者側は保険料の半分を負担します。不況のなかこの負担を逃れようとする企業の対応が問題になっています。

 社会保険庁は四月に「適用徴収対策室」を新設しました。保険料の収入もれを防ぐため、(1)現時点でどれだけ未加入の法人、事業所があるのかを把握する(2)今後設立される新規法人について実態の把握と指導に努め、未加入法人の増大を防止する(3)指導に従わない法人に対する方策を強制措置も含めて検討する――などを柱に取り組みを強めるとしています。


解説

改悪が空洞化に拍車

 厚生年金は、すべての法人、常時五人以上の従業員を使用する事業所に加入義務があります。未加入の事業主には、六カ月以下の懲役または二十万円以下の罰金という罰則があります。しかし、故意による未加入の立証が難しいことから、ほとんど適用されてきませんでした。職権発動による強制加入についても「保険料の納入がなければ、年金や医療費の支払い対象が増えるだけの結果に終わりかねない」として、社会保険庁は二の足を踏んできました。

 厚生年金に加入する企業は減り続けています。二〇〇二年度末の時点での加入事業所数は百六十二万八千八百四十一。五年連続の減少で、ピークの一九九七年度と比べて約七万の減少です。一方で厚生年金に比べ保険料負担が少ない雇用保険の適用事業所は同じ五年間を見ても増えています。

 不況による企業倒産だけでなく、厚生年金の保険料負担を理由にした加入逃れや脱退などのケースが多数あると見られています。

 今回の年金法案では、現行13・58%(年収比、労使折半)の保険料率を十四年連続で引き上げて18・3%とする大幅負担増が持ちこまれています。このため財界は、賃金の低い不安定・有期雇用の拡大など、保険料負担の影響を小さくするための新たなリストラの推進を打ち出しています。未加入法人の広がりにも拍車をかける動きで、厚生年金の空洞化をいっそう深刻にするものです。

 坂井希記者


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