2004年5月11日(火)「しんぶん赤旗」
四月から消費税の免税点が、年間売り上げ一千万円以下の事業者に引き下げられました。この改悪で多くの無認可保育所にも消費税が課税されることになります。保育所や父母への新たな負担となることから「見直してほしい」という声が高まっています。
「本当にびっくりしました。税理士の方に教わりながら昨年度の課税収入で計算すると、消費税は約五十万円になります。大変な出費増です」
埼玉県川口市の無認可保育所「ともいき保育園」(定員二十一人)の園長・木下美名子さんはため息をつきます。
同園は一九六七年に共同保育所として誕生。三歳にならないと公立保育園に入園できないときから産休明け保育を実施するなど、父母の願いにこたえた保育に先進的に取り組んできました。
同園の収入は、保育料や入園料、市の補助金、バザー収益など合わせて約二千二百万円。その七割を職員給与・手当が占めますが、二十三年勤務している木下さんで、月額基本給は約十六万円です。
「毎年、安定した経営のめどがたたないのが悩みです。本当は保育士の勤続年数や専門性に見合った給料を払いたいのですが…」と木下さん。
老朽化している園舎の改修も問題です。
認可保育所は児童福祉施設であり非課税、無認可保育所は児童福祉施設ではなく営利を目的とした事業体であり課税する―というのが政府の考えです。
「園児が十二人くらいになれば課税収入は一千万円を超えます。ほとんどの無認可保育所が課税の対象になるので経営危機に陥り、つぶれる園も出てくるでしょう」
全国無認可保育所連絡協議会の永田郁代事務局長は憤ります。
無認可保育所への課税について「無認可保育所は児童福祉法二四条第一項のただし書きに基づくれっきとした『児童福祉施設』であり、課税の対象にはなりません」といいます。
無認可保育所は全国に六千八百四十九カ所、約十七万九千人の子どもたちが利用しています。政府は、急増し続けている待機児童解消の受け入れ先として無認可保育所を活用してきました。しかし、「児童福祉施設」として認めていません。
三月末、日本共産党の大門みきし参院議員の追及に、政府は、厚労省が新たな基準を設ければ無認可保育所への消費税の課税を見直す可能性を示唆しました。
全国無認可保育所連絡協議会は、四月中旬、厚労相に「無認可保育所には消費税納税義務がない」との請願書を提出。さらに地方議会に「無認可保育所は課税対象外」との意見書を提出させる運動に取り組んでいます。
川田博子記者
消費税の免税点 消費税の申告には、はんざつな実務負担がともない、また小規模業者ほど消費税の転嫁が困難です。小規模業者の負担軽減のため「免税点」が設けられ、今年三月末までは、年間売り上げ三千万円以下が免税事業者とされていました。