日本共産党

2004年5月12日(水)「しんぶん赤旗」

イラク人拷問・虐待

米団体が報告書

被害者、家族に聞き取り調査


「恒常的な過度の暴力」

生々しい実態明らかに

 「殴られ、壁にぶつけられ、背中を踏みつけられ、足のつめをはがされた」「与えられたのは化学薬品入りの水と(イスラム教徒が食べられない)豚肉入りの軍用食だった」――。世界中から暴力をなくす運動をしているクリスチャン・ピースメーカー・チーム(本部、米国シカゴ)のメンバーが、米兵により拘束され、収容所内で虐待を受けたイラク人およびその家族の聞き取り調査を行い、このほど、その結果をまとめた報告書を公表しました。報告書には米兵による拷問・虐待がアブグレイブ収容所だけでなく、占領下のイラクで広範に行われているという生々しい実態が被害者の口から語られています。

 この調査は昨年五月から十二月までバグダッドなどで行われ、今年一月までに報告書が作成されました。

 クリスチャン・ピースメーカー・チームは、バグダッドなど現地で、女性一人を含む連合軍による拘束者七十二人について本人や家族、友人に聞き取り調査を行い、これに関連する情報を占領軍当局者やその契約業者から集めています。

 報告書は、この調査にもとづき、米軍の行為には(1)不正確な情報に基づく深夜の家宅捜索・拘束(2)行き過ぎた暴力の行使と財産の侵害(3)容疑説明なしの拘束―など共通する特徴がみられるとしています。また拘束者の待遇についても、(1)収容所環境の劣悪さ(2)家族との接触が非常に制限されていること(3)恒常的な暴力―などを指摘しています。山田芳進記者

被害者が証言

私は心も体もどんどん悪くなった

 報告書とともにイラク人収容者のインタビュー内容が公表されています。収容者の一人、農業省の下級役人として働いていたアブドルラマンさんは、こう証言します。

 ◇

 彼らは私をバグダッド・アッシャーブ地区の基地に連れて行き、二日間、後ろ手に縛って独房に入れ、一日一回スプーン一杯の軍用食とコップ二杯の水しか与えなかった。その間、しょっちゅう殴られ、周りの壁にぶつけられ、背中を踏みつけられ、足のつめをはがされた。

3分間も電流

 バグダッド国際空港内の収容所に連れて行かれ、体の大きく暴力的な“医師”に診察された。彼は私をけり、床に転がし、腕を私の胸にめり込ませ、意識があるかどうか確かめた。それから何日もフセインやその息子たちの居所を教えろと厳しい取り調べが続いた。

 野外にある、木でできた汚く暑く小さな部屋に入れられた。豚肉入りの軍用食(私はイスラム教徒なので食べられない)を与えられ、シャワーは禁止、トイレは一日三回だけ許された。私は体も心もどんどん悪くなり、フセインの居所を知っているとうそを言った。そうすると米兵は罰として三分間も強い電流を私に流した。

 空港内の別のテントに移された時、女性や老人の拘束者も多く見た。彼らはみな砂漠の上で寝るのに一枚の毛布しか与えられず、せっけんもなく、豚肉入り軍用食と化学薬品がたくさん入った水を与えられるだけだった。私は仲間とともに、合法的な裁判を求めて抗議した。看守たちは特別部隊を呼び、私たちを後ろ手に縛り、三時間も殴り続けた。

むりやり拘束

 私はバース党員でもフセイン支持者でもなかった。誰かが、私がフェダイーン(フセインの親衛隊)のメンバーだと言ったのを信じて、米兵がやってきた。昨年六月十四日の午前二時だった。その時は妻と十歳の娘しかいなかった。

 彼らはドアをけり破り、家中を捜し、宝石と現金五百万イラク・ディナール(約二千五百ドル)を押収した。私が不在だったので彼らは帰った。十八日に彼らが三度目に来た時、ヘリコプター一機、戦車三台、重装甲車六台を連れてきた。過去二回の捜索で壊されたドアから手投げ弾を投げ入れ、四方から、上からも侵入してきた。

 私はおびえる妻と娘を抱いて彼らを待った。彼らは私たちに銃を突きつけ、私はつたない英語で「何でも話す用意がある。こんなに家を壊し、家族を怖がらせる必要はないだろう」と言った。ある上官が「おまえはテロリストだ」というので、書類を見せると、それには目もくれず「降伏し武器を引き渡せ」といった。彼らは家中を捜索し、近所にも聞いて回ったが、何も見つからなかったし、近所の人は私は無実だと言ってくれた。それなのにむりやり拘束された。

損害賠償拒否

 九月、私はウムカスル(クウェート国境近く)の収容所に連れて行かれた。そこで出会った少佐が私の話をよく聞いてくれた。おかげで私はバグダッドに戻り、やっと解放された。私は空港収容所、連合軍運営のイラク人援助センター、米国人裁判官に損害の賠償を求めたが、彼らはみな拒否した。拘束されている友人や親族の情報は何もない。米国人、そして世界の人々に私の例や他の何百もの似たような例を知ってほしい。イラクが真に自由で正義のある国になってほしいと思う。


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