2004年5月13日(木)「しんぶん赤旗」
政府与党が、国会にだした年金法案は「百年安心」「抜本改革」だと国民に言い張ってきた根拠が、まったくのごまかしだったことが十二日の参院本会議での小池晃議員の質問で明らかになりました。「改革」の真実とは――。
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“保険料の引き上げに上限をもうけます”“給付水準は50%を保障します”――これが、坂口力厚労相(公明党)が法案提出にあたり制度の「根幹にかかわる改革を行う」とした根拠です。自民党は国民向けのパンフレット(写真)で、国民年金の上限は月額一万六千九百円で「これ以上は絶対に引き上げません」と断言。厚生年金の給付水準について「現役世代の収入の50%以上となるようにします。これは、安心のためです」と説明しています。
小池議員は、この根拠が二つとも違っていたことを認めさせたのです。
上限1万6900円 |
「国民年金の保険料は賃金の名目上昇率に連動するので、保険料が固定すると政府が説明した二〇一七年度を過ぎても上がりつづけます。実際はいくらになるのか」
小池議員の問いに、坂口厚労相が答弁。議場はどよめきました。二〇一七年度は月額二万八百六十円、二七年度二万五千六百八十円、三七年度三万千六百十円――。
月額一万六千九百円で打ち止めになるはずが、一万円札が二枚、三枚あっても足りない保険料になるのです。現行の一万三千三百円に比べれば二〇一七年度で一・五倍。実際に月々支払う保険料より年間五万円近くも少ない負担に見せかけていたのです。二七年度で一・九倍、三七年度二・三倍にも現行保険料より跳ね上がります。
これまでの政府の説明は、こうでした。現行月額一万三千三百円の国民年金保険料は来年四月からあがり、引き上げ額は月二百八十円。二〇一七年度までの十三年間連続の引き上げによって上限で固定される二〇一七年度には一万六千九百円になります。
法案は、これに加え、「名目賃金変動率を乗じて得た率を基準として改定する」とこっそりもりこんでいました。国民が読んでもすぐに理解できない、官僚の言葉で隠されていました。負担増は月二百八十円の引き上げではなく、賃金上昇率(過去三年分の平均)を上乗せして、国民に求めていたのです。
法案が前提にしている賃金上昇率の毎年2・1%(二〇〇九年以降)をもとに計算すると、坂口厚労相が示した保険料額になるのです。これが現時点でわかっている保険料の名目額になるのです。
「政府のこれまでの説明は事実に反する」。国民の怒りを代弁する小池議員。坂口厚労相は「賃金上昇に伴い上昇することは当然」と居直りました。反省はまったくありません。
“50%を保障します” |
もう一つのいつわりは、厚生年金の給付水準。現役世代の平均収入の約59%(所得代替率と呼ぶ)を自動的に引き下げるが、“50%よりは下げないから安心してほしい”という説明でした。この「50%確保」の対象としていたのは、夫が四十年サラリーマンで妻が専業主婦の「モデル世帯」です。衆院の法案審議ではこうしたモデルが厚生年金加入者に占める割合はごく少数と大問題になりました。
ところが、小池氏の質問で、この「モデル世帯」であっても、「50%確保」が年金受給が始まる六十五歳時点にすぎないことが明らかになったのです。受給開始から十年たった時点で50%が保障されるのは、現在六十五歳の世帯だけです。答弁で坂口厚労相は、現在五十五歳、四十五歳の人はいずれも50%を下回ることを示しました。受給開始年齢から二十年たった時点では、すべての「モデル世帯」で50%を下回ることになります。「50%確保」の根拠は完全に崩れ去りました。
ところが小泉首相は「高齢になるほど消費水準は低下する傾向もふまえれば、高齢者の生活の安定が大きく損なわれることはないと考えている」とのべました。年寄りは消費が減るので年金給付は少なくてもかまわない、といわんばかりの答弁。国民の生存権の保障など眼中にない冷たい姿勢をあらわにしました。