2004年5月14日(金)「しんぶん赤旗」
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二〇〇〇年の国会への憲法調査会設置以来、初めてとなる衆院憲法調査会の中央公聴会が十三日、二日間の日程を終え閉会しました。これまで、国民の憲法に対する意見を直接聞く場として、地方公聴会が全国九カ所で開かれてきました。中央公聴会はこれを踏まえて開かれたものです。
公募者三人を含む九人の公述人は、一般市民、国際政治学者、歴史学者、文化人類学者、法律家など多彩な顔ぶれで、それぞれが意見をのべ、質疑が行われました。九人の公述人のうち七人が、改憲の焦点となる九条の平和主義に触れ、うち五人が九条改憲に反対ないし慎重な姿勢を示しました。各地での地方公聴会と同様、政党状況や国会内での論議とは異なり、国民の中では九条明文改憲に強い抵抗があることが改めて示されました。
弁護士の吉田健一氏は「世界の流れは憲法九条の武力によらない平和の方向にある。アメリカの方ばかり向いているから九条が時代遅れに見える」と強調。「環境、プライバシー権などを今まで認めようとしてこなかった人たちが、それを理由に改憲を主張しても通らない」とのべました。
元大学院生の日高明(さやか)さんは「私は九条の平和主義があったからこそ、日本を愛することができた」とのべ、「日本は平和的生存権を最重要視し、徹底した非武装主義で国際貢献に努めることに最大の価値を置くべきだ」と主張しました。日本共産党の吉井英勝議員は「若い人の憲法擁護の熱心な意見が聞けてうれしかった」とのべました。(いずれも十三日)
五月三日の憲法に関する世論調査の結果を受けて、「国民の多数が憲法改正を支持している」という見方があることについても意見が出ました。小熊英二慶応大助教授は「いきづまりを感じている国民が『改革』を支持しているのと同じ。一般に改憲には反対しないが具体論になるとバラバラで、九条改憲については反対が多数だった。『改憲賛成が多数』ということを過大に受けとめるべきではない」と指摘。船曳建夫東大大学院教授も「『不磨の大典』とはしないという意味で改憲に反対しないが、九条改憲には反対が多数だったということ。きわめて普通の、健康な判断」とのべました。(いずれも十二日)
元国連軍縮大使の猪口邦子・上智大学教授は、国際政治にかかわる経験から憲法九条の明文改憲には慎重な姿勢を示し、日本の軍縮の主張が聞き入れられるのは「日本が被爆国であるだけでなく、日本が戦後、憲法を誠実に生かしてきたからだ」とのべました(十二日)。
他方、中央公聴会はこの間の一連の地方公聴会と比べても、改憲派議員の不まじめで極めて緊張感に欠ける態度が目につきました。
自民党、公明党の議員席をはじめ、欠席、途中退席が非常に目立つ状態が続きました。十二日の質疑の途中、自民党議員が着席したまま携帯電話で通話するなど目に余る光景も。事務局関係者から「学級崩壊状態」となげく声も聞かれました。
傍聴者からも「憲法改正という大問題で国民の声を直接聞くためのはずなのに、これでは公聴会としての意味はない」など怒りの声が出ました。