2004年5月15日(土)「しんぶん赤旗」
十三日に行われた衆院憲法調査会の中央公聴会で、吉田健一弁護士が行った陳述(要旨)を紹介します。
いま、憲法「改正」について考えるときに、イラクの問題を抜きにはできません。武装した自衛隊がイラクにまで派遣されている、この現実は憲法そのものが守られていないと言わなければなりません。
自衛隊は米国の占領支配の一環としてイラクで活動しており、占領行為は憲法九条二項で禁止された交戦権の行使になります。また、「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域」であることは、米軍自身が認めているところです。ここで自衛隊は、戦闘行為を展開している米英軍の物資輸送や武器をもった米兵の輸送まで行っているのです。憲法で禁止された武力行使にも該当する行為です。
憲法を無視した自衛隊の海外派兵が行われているもとで、米国は日本に対して集団的自衛権の行使を求めています。そのために憲法九条の「改正」が必要だと議論されていることはきわめて由々しきことです。
読売新聞の改憲試案では、個別的自衛権とともに集団的自衛権を行使しうるとし、国際平和協力活動も行うとされています。集団的自衛権を認めることによって、米国との共同行動には法律上の制約はなくなるという説明がされています。さらにイラク戦争について、自衛隊も国際平和協力として、当初から米軍と行動を共にした英軍と同様の行動を取り得ると説明されているのです。
数千人から一万人以上のイラク国民を死に追いやった米国の先制攻撃への参加をも可能にする憲法になってしまったら、それは平和憲法とは到底いえません。
憲法の平和主義は、戦争を行わないということと同時に、平和のもとでこそ人権も民主主義・地方自治も保障されるという関連があります。
平和憲法の制定とあわせ、国家総動員法など戦争するための法律がすべて否定され、軍事目的で土地を強制収用できる規定も削除されたのです。
ところがその後、日本は米軍に基地を提供し、基地公害などにより住民の権利が侵害される事態を放置してきました。沖縄の人々は強制的に土地を奪われ、横田基地などの昼夜を分かたぬ基地騒音についても、周辺住民は我慢を強いられつづけているのです。
国会で審議中の有事法制では、自治体・民間業者・マスコミ・一般国民まで、戦争協力を余儀なくされています。
改憲によって戦争のできる憲法になってしまったらどうなるでしょうか。軍事をいっそう優先させることになり、生活や権利がますます無視される事態となることは必至です。
平和を実現することはもとより、国民の生活と権利を守るためにも、憲法を変えるのではなく、憲法を守り生かす方向こそ求められています。
戦争できる憲法にすることは、普通の国と同じ憲法にするだけだという意見もあります。しかし日本の平和憲法こそ、平和を求める市民によって国際的にも支持されているのです。
一九九九年にオランダのハーグで開催された世界市民平和会議では、「公正な世界秩序のための基本十原則」の第一項で「各国議会は、日本の憲法九条のように、自国政府が戦争をすることを禁止する決議をすること」が採択されました。
現在の憲法の平和主義を生かして、軍事にたよらない平和な国際関係の実現を追求することこそ、日本に課せられた課題ではないでしょうか。