2004年5月16日(日)「しんぶん赤旗」
自民、公明の与党と民主党は有事関連法案・条約案について十九日にも衆院有事法制特別委員会での採決を強行しようとしています。法案は、米国の海外での先制攻撃の戦争に自衛隊をはじめ国、自治体、国民を総動員する有事法制を具体化するもの。十分な審議も尽くさないで採決を強行することは許されません。
これまでのわずかな審議でも、日本共産党の追及などで法案の数々の問題点が明らかになっています。
たとえば、「米軍行動円滑化法案」に基づいて、日本が武力攻撃を受けていない「武力攻撃予測事態」の段階から自治体や民間事業者が迫られる米軍支援の内容には、いっさい限定がありません。「日米物品役務提供協定(ACSA)」改定案は、海外で武力行使をしている米軍に自衛隊が弾薬提供もできる仕組みに事実上なっています。「特定公共施設利用法案」については、「武力攻撃予測事態」を理由に日本の民間港湾や空港の優先利用を認められた米軍が、先制攻撃のために出撃することも排除されていません。
参考人質疑では、日本弁護士連合会(日弁連)の代表が、広範な国民の強制動員などを盛り込んだ「国民保護」法案について「基本的人権を侵害し、知る権利を制約し、地方自治を含むわが国の民主的な統治構造を平時から大きく変容させる危険性をはらんでいる」と指摘。「十分な国民的議論を尽くしたうえで、慎重な国会審議が求められる」「大変、審議期間の限られた今国会において、法案を採決することには強く反対する」と訴えました。
ところが、自民、公明の与党や民主党は「論点は出尽くした」といって、十三日で衆院有事法制特別委での一般質疑を打ち切りました。
憲法に違反し、自治体や国民生活に重大な影響を与える大問題にもかかわらず、広く国民から意見を聞く公聴会も開かれていません。
民主党は十四日に「修正」案を提出。与党との協議で、同案をもとに三党共同「修正」案をつくって十九日に提出し、同日の委員会で法案の採決を行うことで一致したと報じられています。
昨年六月に成立した有事関連三法に賛成するなど、有事法制づくりを推進してきた民主党の「修正」案は、法案の危険な本質を変えるものではありません。
自爆テロなど日本への外部からの武力攻撃とは異なる「緊急対処事態」を有事法制が対処すべき事態として新たに規定。自治体や国民を強制動員する枠組みをさらに広げる危険な内容になっています。
さらに、与党と民主党は十四日、有事関連法案の衆院通過前までに作成することを決めていた「緊急事態基本法案」の「骨子」についても実務者レベルで合意しました。
同法案は、対象とする事態を「国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態」全般に広げ、自治体の「責務」や国民の基本的人権の「制約」を定めるものです。週明けに三党の幹事長が合意文書に署名することになっています。
有事関連法案の十九日委員会採決は、有事法制づくりを一体となって進める与党と民主党の都合を一方的に押しつけようとするものです。
しかし、民主党の「修正」案は提案理由説明が行われただけで、一度も質疑をしていません。有事法制の枠組み自体を変えるものだけに、改めて徹底した審議が必要です。