2004年5月16日(日)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】ワシントンで十四日に開かれた主要八カ国(G8)外相会合は、来月におこなわれる首脳会議の議題や合意をめぐって話し合いがおこなわれました。首脳会議でも重要議題になることが確実視されているイラク問題で、G8諸国間の溝が改めて露呈しました。
国務省でおこなわれた共同記者会見にはドイツのフィッシャー外相以外の代表が集合。報道陣の質問に答えフランスのバルニエ外相は、六月三十日に主権が移されるイラクの「新政権」は、「経済、司法、捜査当局、天然資源などを管理」する「主権をもった政府でなければならない」と強調。ロシアのラブロフ外相も、より多くの国際社会が支持しイラク国民自身が必要とすることを基礎とした「真に主権を有する」政府が重要だと主張し、両外相とも主権を制限する米国の主権移譲案に異を唱えました。
これに対してパウエル米国務長官は、六月末の主権移譲後も米部隊が駐留する「権限を有する」と主張。今後ともイラクに占領を続ける構えを改めて表明し、さらに、「イラクの新政権は一部の権限もしくは主権を多国籍部隊の司令官に譲る」と言明し、米軍の指揮権を放棄しない考えを示しました。
混乱するイラクの事態収拾にむけ、米ブッシュ政権は六月上旬のG8サミット前にイラク新決議を国連安保理で採択させる意向ですが、フランスやロシアなど「反戦国」の抵抗が現在も続いていることが浮き彫りになりました。ラブロフ外相は「新決議の草案などはテーブルにのっていない」とも述べました。また、フランス、ロシア、カナダの、イラクに軍隊を派遣していない三カ国の外相は、「今も明日も(イラクへの軍隊)派遣はない」(仏外相)と断言し、軍事にたよらない政治的な解決を強調しました。