2004年5月17日(月)「しんぶん赤旗」
米国の先制攻撃戦略を補完する「ミサイル防衛」(MD)の拡大・強化に向け、自民、民主、公明各党の国防族議員でつくる「安全保障議員協議会」(会長=瓦力・元防衛庁長官)が動きを強めています。
「日本もエアボーンレーザー(ABL)開発の研究をぜひやってもらいたい」。民主党の末松義規議員は十二日の衆院有事法制特別委員会で、興奮気味に訴えました。
末松氏は、五月の大型連休中に協議会の一員として自民、公明の議員らと米国を訪問したことを紹介。ロサンゼルスの米空軍基地で見たABLに、「感嘆した」と繰り返しました。
ABLは、ジャンボ機に搭載したレーザー砲で、敵国が発射した弾道ミサイルを発射直後の上昇(ブースト)段階で迎撃する兵器です。この段階では、弾道ミサイルの着弾地域を予測するのは不可能です。日本がABLを導入し、日本以外の国に向けて発射された弾道ミサイルを迎撃すれば、政府解釈からも違憲の集団的自衛権の行使につながります。
しかし、石破茂防衛庁長官は、「議論の価値はある」と答え、否定しませんでした。
日本の軍需企業関係者は「現時点でABLの共同開発や導入は現実味がない」としつつ、「米国の『ミサイル防衛』は二年ごとに見直しを行う。将来、日本企業が参入する余地は大いにある」と言います。
末松氏が訪米したのは、「日米安保戦略会議」の第三回会合(五日、ワシントン市内)に出席するためでした。同会議は、安全保障議員協議会に加え、日米の軍需企業などが構成員になっています。同会議の設立準備委員会の内部文書によると、日米両国の軍需産業の基盤充実のため、(1)技術移転(2)兵器購入、つまり日米間の兵器売買――などを目的にあげています。
第三回会合には、自民党の額賀福志郎政調会長、久間章生幹事長代理、民主党の前原誠司「次の内閣」外務大臣らが出席しています。
会合では、(1)国産の武器や武器技術の輸出を事実上、全面的に禁止した「武器輸出三原則」の緩和(2)集団的自衛権の行使や憲法九条改悪(3)米国の先制攻撃戦略の容認――などを主張しました。
同席した三菱重工の西岡喬会長はこれらの発言に強い“感謝”の意を表明。「ミサイル防衛」の一環として政府が導入を決定したパトリオットミサイル(PAC3)のライセンス生産の促進や、最新兵器の共同開発を進めるため、「武器輸出三原則」のいっそうの緩和を要求しました。
帰国後、民主党の前原氏は十二日の衆院有事法制特別委員会で「武器輸出三原則の見直しは当然必要」と主張しました。
昨年十一月に東京都内で開かれた第二回会合では、米軍需企業が開発した「ミサイル防衛」関連兵器の展示を憲政記念館で行って批判を浴びました。しかし、今年十一月に都内で開かれる第四回会合では、再びミサイル展示を行う予定。関係者は、「昨年の米国産兵器の展示はアジア初。今後はこれを定着させていく」と言います。
ミサイル防衛 米国の敵対国家・勢力の弾道ミサイルを迎撃するシステム。核攻撃を含む先制攻撃への相手側の反撃を無力化することが目的です。
ブッシュ米政権が今年からの配備を決定したのにあわせ、日本も昨年末に導入を決定しました。日本が導入するのは、海上発射型のスタンダードミサイル(SM3)と、地上発射型のパトリオット(PAC3)です。