2004年5月17日(月)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】十七日に発売される米雑誌『ニューヨーカー』は、イラクのアブグレイブ収容所でおこなわれた、米兵による収容者の虐待・拷問は、ラムズフェルド国防長官が承認する秘密計画の結果、起きたと報じました。「一部の兵士がおこなったこと」(ブッシュ大統領)として軍上層部や中央情報局(CIA)の関与を否定するブッシュ政権首脳部の主張を根底から崩すもので、政府と軍首脳の責任が正面から追及されることになるとみられます。
『ニューヨーカー』は四月末に、セイモア・ハーシュ記者の記事でこの虐待問題を暴露し、ラムズフェルド国防長官の責任追及への動きをつくり出してきました。今回の記事も同じくハーシュ記者の手によるもので、現・元職の政府情報関係者へのインタビューに基づいています。ラムズフェルド国防長官は、増大するイラク国内での反米勢力についての調査を進めるため、通常の方法によらない拘束者の尋問を極秘に許可、それが今回の収容所での虐待・拷問につながったと報じています。
記事は、国防総省が策定した、「テロリストや反米勢力」の情報を得るため拘束者を捜査する「特別計画」があったと報道。同計画では、収容者を眠らせないよう肉体的に痛めつける、身体的危害を加える、性的に辱めるなど、ジュネーブ条約どころか、米軍でも禁止している虐待・拷問を国防長官の認可に基づいておこなえることになっていました。計画は「必要な者を捕まえて、やりたいこと(拷問)はなんでもやれ」とのルールになっていました。
この計画について、ある国防総省顧問は匿名で「ケンボーン国防次官(情報担当)が担当で、承認はラムズフェルド国防長官とマイヤーズ統合参謀本部議長がおこなう」とコメントしています。CIAは同捜査の参加を拒絶したといいます。
同記事によると、同計画は、アフガニスタンでもおこなわれ、イラクでは、昨年八月に国連バグダッド事務所が爆破されて以降始められました。
イラク人の虐待・拷問問題をめぐって、ラムズフェルド国防長官は連邦議会の公聴会などで、軍上層部の関与を否定する一方、責任を全面追及すると言明。ケンボーン次官は、「イラク駐留米軍は、ジュネーブ条約を明確に順守している」と証言しています。
この記事について、米国防総省は十六日、「謀略的」(報道官)だとして否定しました。しかし、もし『ニューヨーカー』誌の記事が正しければ、ラムズフェルド長官やケンボーン次官は、辞任どころか偽証の罪に問われることになります。