2004年5月20日(木)「しんぶん赤旗」
自民・公明の与党と民主党が二十日の衆院有事法制特別委員会で採決を強行しようとしている有事関連法案――。海外で戦争に乗り出す米軍を支援するため、自衛隊をはじめ国のあらゆる機関、自治体や民間企業、国民を総動員する体制づくりが狙いです。憲法をじゅうりんし、日本とアジアの平和を脅かすものです。
■政府有事関連法案のポイント■ |
米軍行動円滑化法案 |
■「武力攻撃予測事態」と「武力攻撃事態」での米軍の軍事行動を円滑かつ効果的にするための措置(行動関連措置)=米軍支援の実施を「政府の責務」とする |
日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案 |
■現在は共同演習などに限定しているACSAの適用対象を「武力攻撃事態」「予測事態」のほか「国際の平和及び安全に寄与する」目的にも広げる |
特定公共施設利用法案 |
■「武力攻撃予測事態」から米軍や自衛隊のために港湾、飛行場、道路、海域、空域、電波の「優先的な利用」を確保する |
海上輸送規制法案 |
■米軍と共同対処行動をする海上自衛隊が、外国軍用物資を輸送している疑いがあれば、公海上で第三国の民間船舶を停船・拿捕(だほ)し、応じなければ武器使用も可能にする |
国民保護法案 |
■自治体や「指定公共機関」に「国民保護」の「責務」を課し、土地・家屋の使用、立ち入り禁止、物資の収用などを罰則つきで強制する |
今回の有事関連法案は、昨年六月に与党と民主党などが成立を強行した「武力攻撃事態法」の枠組みにそって、米国の海外での戦争に日本を本格参戦させる体制をいっそう具体化するものです。
一つは、米軍の行動を直接支援する内容です。関連法案の一つ、「米軍行動円滑化法案」は、日本への武力攻撃に至るはるか以前の段階=「武力攻撃予測事態」から、米軍の軍事行動を「円滑かつ効果的」にするための措置の実施を「政府の責務」にしています。
自衛隊は、米軍に対し、弾薬の提供を含めた補給、輸送、修理・整備、医療、通信など広範な兵たん支援を行うことを定めています。
自衛隊の支援を戦闘が行われない「後方地域」に限定していた「周辺事態法」の地域的制約をいっさい取り払いました。
米軍が海外で武力行使を行っている「周辺事態」で、これまで憲法上の理由で認められてこなかった弾薬の提供をはじめ、戦闘地域での支援が、今回の法案では事実上可能な仕組みになっています。
自治体や民間事業者も、政府からの米軍支援の要請に応じる「責務」を負わされます。支援の内容、事業者の範囲も無限定です。
さらに、「米軍行動円滑化法案」に伴う「日米物品役務提供協定」(ACSA)改定案は、「国際の平和及び安全に寄与する」目的で日米が相互に兵たん支援を実施することを新たに規定。「日本有事」とは全く関係のない、海外でのあらゆる事態に米軍と自衛隊が共同対処する仕組みをつくるものになっています。
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二つめは、米軍支援のために、空港、港湾などの公共施設を優先使用する仕組みを導入していることです。
「特定公共施設利用法案」は、「武力攻撃予測事態」から、民間の港湾や飛行場、道路などの管理者に対し、政府の定める「指針」に従い、米軍や自衛隊などに優先利用させることを「責務」にしています。
港湾、空港については、管理者である自治体などが政府の要請に従わない場合、首相による「指示」や国土交通相を通じての強制使用まで定めています。
港湾や空港の優先利用を認められた米軍の行動に何ら制約はなく、「周辺事態」での武力行使に出撃することもできます。「周辺事態法」があくまで自治体に「協力」を求めるとしていた制約を取り払い、米軍支援のために港湾や空港の強制使用を確保しようというのです。
三つめは、米軍の戦争に参戦するために国民の基本的人権を制限、侵害しようとしていることです。「国民保護法案」では、自治体や「指定公共機関」に指定される民間企業・団体が、住民の「避難」や「救援」、経済統制につながる「国民生活の安定」のための措置を実施することを「責務」にしています。
運輸・医療関係者には負傷者の搬送や医療活動を強制。土地・家屋の強制使用や物資の収用といった私有財産の制限をはじめ、立ち入り制限・禁止区域の設定、交通規制など国民生活の統制を罰則付きで行うことも定めています。
しかも、都道府県と市町村は、自衛官・警察官が加わる「国民保護協議会」を設置し、住民動員の計画を作成することや、国民の「訓練」や「啓発」も規定。平時から戦争体制に国民を組み込むシステムづくりを進めようとしています。
与党と民主党が十九日に共同提出した「修正」案は、こうした法案の本質をいっさい変えるものではありません。
民主、与党と一体になり推進有事関連法案は、野党の民主党が自民・公明両党と一体になって推進してきました。 もともと今回提出されている「国民保護法案」は、昨年五月に当時の与党三党と民主党による有事法案の「修正」合意で「一年以内を目標に実施すべき」とされたもの。 だからこそ、今回の法案の取り扱いでも、政府・与党側は「民主党の賛成を得て成立した有事法制なので、今後の法案でも協議することはよいことだ」(小泉純一郎首相、二月二十四日)として、いち早く民主党との協議による成立をめざす立場を明らかにしました。 重大なことは、有事法案の審議と並行して、自公両党と民主党は、昨年の「修正」合意にもとづく「緊急事態基本法協議会」を開催し、将来の有事法制強化のレールまで敷いたことです。「緊急事態基本法案」は、民主党が要求してきたもので、(1)日本有事に至る事態(2)日本有事(3)大規模災害などをまるごと対象にしようとしています。国民の基本的人権をいっそう制約するものです。 自民党は同協議会の開催にあたって、有事法案の速やかな審議入りを要求(三月二日の非公式協議)。民主党が「緊急事態基本法」の制定に関する合意を「最優先にする」(菅直人代表=当時)態度を示すと、自公両党は同法案の骨子を衆院通過までに示すことを提案しました。「緊急事態基本法」の扱いが有事関連法案をめぐる取引材料にされたのです。 民主党は、有事法案の審議入りの際に、この「緊急事態基本法」に関する合意を「大きな前進だ」(長島昭久氏、四月十三日)と評価しました。 |