2004年5月20日(木)「しんぶん赤旗」
イラクのアブグレイブ収容所のイラク人収容者虐待事件で起訴された米兵に対する軍法会議が十九日バグダッドで始まり、この日、虐待に関与したとされるシビッツ技術兵に有罪が宣告されました。一方、拷問・虐待で新たな事実が米国のメディアなどによって報道されています。
米紙ニューヨーク・タイムズ十九日付(電子版)は、イラク人に対する拷問・虐待が行われたバグダッド近郊アブグレイブ収容所で昨年九月から今年二月まで尋問の責任者を務めたパパス大佐が、より多くの情報を引き出すよう上官から大きな圧力を受けていたと報じました。
パパス大佐をよく知る複数の陸軍幹部の証言に基づくもの。上官にはイラク駐留米軍のサンチェス司令官(中将)などが含まれ、証言が事実であれば拷問・虐待問題の追及が重大局面に発展することは必至です。
証言によると、同大佐はこの任務を「麻酔薬なしで歯の治療をするようなもの」とたとえ、しばしばサンチェス中将やファースト少将ら上官と協議していました。
第二〇五情報旅団司令官のパパス大佐はイラク到着の数日後、グアンタナモ基地の収容所で指揮官をしていたミラー少将の命令でアブグレイブ収容所に異動。
同大佐は九月末までにイラク人収容者の尋問棟を管理するようになり、十一月十九日以後はサンチェス司令官の命令でアブグレイブ収容所全体の管理権限を第八〇〇憲兵旅団から引き取り、同大佐の旅団が指揮するようになりました。
パパス大佐は、憲兵隊員に命じてイラク人収容者を裸にし、手かせ足かせにしたことを宣誓証言で認め、取り調べを受けている最高位の幹部です。
【ワシントン=浜谷浩司】イラクのアブグレイブ収容所で起きたイラク人拷問・虐待事件に関連して、米ABCテレビは十八日、昨年九月に同収容所に勤務した米軍情報部門の現役兵士が、事件に関与した兵士は数十人にのぼるにもかかわらず、軍は隠ぺい工作を行っている、と証言したことを報じました。
「隠ぺい工作があることは明らかだ」と証言したのは、第三〇二軍情報大隊に所属したサミュエル・プロバンス軍曹。同収容所で、情報部門が使用する機密コンピューター・ネットワークの管理に携わり、現在はドイツに駐留しています。
同軍曹は、虐待事件を直接は見なかったものの、「(取調官から)収容者を裸にするのはごくあたりまえで、女性用の下着を着せたこともあったと聞いた」「収容者の首を殴打して倒した」「酔った取調官が女性を半裸にした」などと述べました。そのうえで、問題になっている「憲兵の行動はすべて、取調官の指示によるものだ」と証言。ところが、軍が実施した調査は、対象を憲兵に限定し、取調官の行動を除外したと批判しています。
同軍曹自身、調査にあたったフェイ少将から「黙っているよう促されたようなもの」「正直に言えば、罰せられると感じた」と述べています。