2004年5月21日(金)「しんぶん赤旗」
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社員数あわせて二十八人という三つの会社が、社会保険庁の年金がらみの仕事を三十九億円もすべて随意契約で受注していた―。日本共産党の小池晃議員は、二十日の参院厚生労働委員会で「年金ファミリー企業」ともいうべき実態をとりあげ、年金積立金の目的外流用をやめるよう求めました。
小池議員がとりあげたのは、二〇〇三年三月、全国三百十二の社会保険事務所に導入された「金銭登録機」。国民年金保険料の徴収員が持ち歩く端末のことで、全国で二千五百七十四台を購入、総額四億四千六百万円が国民の年金保険料で支払われました。すべての社会保険事務所が、個別に「カワグチ技研」という会社と随意契約を結び、購入しました。
小池議員によると、社会保険庁は〇三年三月十一日に事務連絡で各社会保険事務所に年度内に導入を終えるよう指示。三月末日までのたった二十日間で、北海道・稚内から沖縄・石垣島まで全国三百十二の社会保険事務所が、数ある会社の中から個別に「カワグチ技研」を探し出し、個別に契約し、納入も終えたことになります。
「カワグチ技研」は「パピアート」という伝票類専用のプリンターを一九九九年に同庁とリース契約。五年間で二十二億七千万円、見積もり額のままで随意契約しています。
さらに「カワグチ技研」と役員が重なる「ニチネン企画」は同庁と出版物やパンフレット等の印刷などの随意契約で、十億八千五百万円(五年間)、「フォーム印刷社」は年金に関する帳簿の印刷など単年度で一億数千万円を随意契約で受注しています。(図参照)
小池議員は、カワグチ技研など三社で三十九億円、従業員一人あたり一億四千万円を超す受注になることを指摘。「この三企業と社会保険庁との関係には異常なものを感じる」として天下りなど厚生労働省との人的関係について徹底的に調査するよう求めました。坂口厚生労働相は「随意契約は今後しない」とのべ、天下りについては「調査する」と答えました。
年金積立金の「浪費の典型」として国会でも再三追及されてきた大規模年金保養施設「グリーンピア」。全国十三カ所のうち、すでに売却が決まっている二施設と、売却見込み額が出ている七施設をあわせると、売却予定額は三十二億円にすぎず、建設費のわずか2・4%であることが、小池議員の調査でわかりました。
「グリーンピア」は、年金積立金を使って建設されましたが、破たんし、政府は「平成十七年度までに全施設の廃止・売却」を決めています。
小池議員の調査によると、二百五十八億円かけて建設した「グリーンピア津南」(新潟県)の売却見込み額が五億円など、大変きびしい状況があります。この九施設の建設費の合計(千百九十四億円)と修繕費・維持管理費の合計(百三十三億円)を合わせると千三百二十七億円ですが、売却予定額は合わせて三十二億円です。九施設だけで年金保険料約千三百億円が消えてなくなる計算になります。
小池議員は、「年金保険料を使ってさんざんムダ遣いをし、赤字になったら『施設を廃止・売却』といって、破たんのつけを(財政力のない)市町村に押し付ける。二重三重に無責任なやり方だ」と指摘、厚生労働省と坂口力厚労相の責任をただしました。