日本共産党

2004年5月22日(土)「しんぶん赤旗」

国民に説明やっぱりなし

年金法案 保険料上限なく、給付50%下回る

首相、厚労相は「議論した」といったが…


 「上限固定」どころか永久に上がり続ける国民年金保険料、「50%確保」どころか40%台にダウンする厚生年金の給付水準――政府、自民・公明両党が国民に説明してきた年金改悪法案の“二枚看板”の偽りが参院審議で明らかになり、答弁に窮した小泉純一郎首相、坂口力厚生労働相は“衆院で議論してきた”と言い逃れようとしています。しかしこの言い訳もまったくのごまかしです。


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“50%確保”が明記された法案要綱。年金を受け取りはじめたときのことだという説明はない。

審議のスタートから口つぐむ

 “議論してきた”ということですが、法案審議で政府はどう説明したのか――。年金法案の審議入りは四月一日の衆院本会議からでした。提案の趣旨を坂口厚労相が説明しました。

 「国民年金及び厚生年金保険財政につきましては、将来の保険料水準を固定」「(国民年金保険料額は)平成十七年度(二〇〇五年度)から毎年度二百八十円ずつ引き上げ、平成二十九年度以降の保険料額を一万六千九百円とする」

 こうのべただけです。

 上限となる月額一万六千九百円の保険料とは、〇四年度から物価や賃金の上昇がまったくなかった場合の価格(政府内では〇四年度価格と呼ぶ)のことです。しかし法案は、物価・賃金上昇率をおりこんで保険料を毎年引き上げていく仕組みになっていました。上昇率は、あらかじめ具体的な数字で見込んであるので、この見込みどおりだといくらの保険料になるか、国会にも国民にも説明できたのです。

 それを参院の審議入りの本会議(五月十二日)で日本共産党・小池晃政策委員長の追及を受けて坂口厚労相が初めて説明しました。

 上限で固定するという二〇一七年度は一万六千九百円でなく、実際は二万八百六十円です。さらに二七年度二万五千六百八十円、三七年は三万千六百十円。このあとも上がっていくことになるので、永久的な保険料負担増をもり込んだ法案です。この実態を隠し、「固定」と説明してきたのです。

給付“5割切れ”は首相が否定

 給付水準はどうか。「夫だけが平均賃金で四十年働いた場合の夫婦の基礎年金を含めた年金の水準で、50%を割り込んでしまうことはない」(坂口厚労相、四月一日の衆院本会議答弁)。これが政府の説明でした。

 ここで取り上げた夫婦のケースは厚労省が年金給付のモデル世帯としているものです。共働き世帯や男女それぞれの単身者の場合、40%、30%台になることが問題になっていましたが、モデル世帯では大丈夫と繰り返していたのです。

 しかし“50%確保”とは、六十五歳になって年金を受け取るとき(新規裁定と呼ぶ)の給付水準だったのです。受給後の七十歳、八十歳になるとどんどん下がり、40%台になるとの説明は何もありませんでした。

 説明どころか、日本共産党の山口富男衆院議員が40%台になる可能性を指摘したのにたいし、小泉首相はこれを否定。年金を受け取るときのことと限定することもなく、こう断言していました。「現役世代の平均的収入との対比で50%を維持することを明確にしている」(四月一日、衆院本会議)。

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資料を示して質問する小池晃議員=18日、参院厚生労働省

「議論した」ときも説明せず

 坂口厚労相が「議論した」というのは、法案の審議入りに先立つ二月二十五日の衆院予算委員会のことのようです。

 そのやりとりは――。 民主党・古川元久議員 「受給開始、一九九九年のときには60%弱の給付水準だった人が…二〇二二年には48・2%まで下がってしまう」「国民に説明しているか」

 坂口厚労相 「名目額は決して減らさない」「物価の状況、経済の状況によって違ってくる」「前提条件を全部お聞きしたわけではありませんからよくわかりません」

 「議論している」と答弁するからには、“50%確保は年金を受け取りはじめるときだけ”と説明しているかと思うと、それはまったく「説明」していません。

 小池氏が「一度も説明していない」と追及したのにたいし、「こういう議論はよくしてきた」「厚生大臣がたしか答弁したことがあるでしょう」という首相答弁(十八日、参院厚生労働委員会)は口からのでまかせでした。

給付水準は3割も削られる

 厚生年金の給付が年齢別に、受給後十年(七十五歳)、二十年(八十五歳)たってどこまで下がるのか――初めて具体的水準が明示されたのも小池氏にたいする政府答弁(十二日、参院本会議)でした。

 「現在六十五歳の人の場合は十年後には51・3%、二十年後には43・2%、現在五十五歳の場合は(受給開始から)十年後に45・4%、二十年後に40・8%」

 六十五歳の場合、受給時59・3%ですから、三割近い大幅な削減です。 これだけ落ちこむのは、前回改悪(一九九九年度)で、賃金上昇に応じて給付をあげていく賃金スライドが凍結されたうえに、今回、「マクロ経済スライド」で物価上昇分の給付引き上げが抑制されたことが重なったためです。

 給付水準は現役世代の平均収入(可処分所得)との比較で示しますが、政府推計で賃金は毎年上昇していきます。しかし給付のほうは、受給開始後の賃金スライド廃止によって、その時代の生活向上分の給付が削られ、物価スライドの圧縮(マクロ経済スライド)によって、消費購買力を確保する年金給付を打ち切ったのです。このダブル改悪によって50%を割りこむ給付削減を押しつけたのです。

 坂口厚労相は、二十日の参院厚生労働委員会で小池議員に再び、国民に説明してきたという経過の真偽をただされ、「調べてみる」と答えざるをえなくなりました。偽りの言い訳で、国民に痛みを押しつけることは許されることではありません。


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