2004年5月28日(金)「しんぶん赤旗」
日本経団連は二十七日、定時総会を開き奥田碩会長(トヨタ自動車会長)を再任しました。企業献金をテコにした政治介入をすすめる「奥田経団連」の二期目がスタートしました。
総会決議では、「わが国の国家像、国家戦略について議論を深め、意見の集約を図る」と指摘。日本経団連はこの日、憲法や安全保障問題を検討するための「国の基本問題検討委員会」を新設しました。委員長には、東京三菱銀行頭取の三木繁光日本経団連副会長が就任しました。
軍事産業を抱える日本経団連が、憲法問題を検討する委員会を設置することは、初めてのことです。財界による政治介入・支配戦略が新たな段階に踏み出したことになります。同委員会では、自民党、民主党の改憲論議に合わせて、憲法九条を焦点に集団的自衛権の問題などを検討することになると見られています。秋にも、報告書を出す計画です。
憲法問題の議論をスタートさせることについて、奥田会長は総会後の記者会見で「(実りのない)論争にすることなく、日本のあり方を深く掘り下げていく」などとのべました。
一兆円をこえる純利益を稼ぎ出すトヨタ自動車の会長でもある奥田日本経団連会長。二期目を迎えた奥田会長が、最近強調しているのが、「経済と政治は不可分である」という考え方です。昨年一月に発表した「奥田ビジョン」で「政治を動かす」と宣言し、一期目では、“通信簿”方式での企業献金を開始。二期目に入って、巨大多国籍企業のトップとして、国のあり方を変えようと乗り出してきました。その焦点が憲法問題です。
改憲へ向けて、大きくかじをきった奥田会長は、政党に対する政策評価項目に憲法と安全保障の問題をとり入れる可能性を指摘しています。
これでは、経済政策だけでなく、憲法までもが財界の政治買収の標的になってしまいます。
財界がいかに巨額のカネで政界を牛耳ることができたとしても、国民の要求にもとづいた運動を直接支配することはできません。財界の野望を打ち破る力は、草の根からの共同の力です。
金子豊弘記者