日本共産党

2004年5月30日(日)「しんぶん赤旗」

審議するほど安心信頼遠のく

年金法案は撤回しかない


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 参院で審議中の年金改悪法案は、自民、公明両党が審議を打ち切り、六月三日に委員会採決をねらうなど、週明けから緊迫した局面を迎えます。“給付五割確保・保険料の上限固定”で「百年安心」としてきた政府・与党の「二枚看板」を打ち砕いた日本共産党の小池晃参院議員(党政策委員長)の追及。審議するほど「安心」「信頼」からほど遠い法案の実像が浮かびあがっています。法案の撤回、出し直ししかありません。

看板総崩れ 共産党の追及で

●モデル世帯5割どころか4割

 老後に受け取る厚生年金の給付水準は、現役世代の平均収入(ボーナス込みで、税・保険料を引いた手取り賃金の平均=可処分所得)の一定割合を確保する仕組みになっています。

 現行は、厚生労働省が決めたモデル世帯(夫はサラリーマンで四十年加入、その間、妻は専業主婦)で59・3%としています。政府与党は、引き下げの歯止めライン(下限)を50%と法案に明記したから、「安心」してほしいと説明してきました。

 引き下げ自体、老後の暮らしにとって大問題ですが、小池議員は“50%保障”という「安心」の大看板そのものが「偽りだ」と追及。坂口力厚労相などの答弁から、50%台が保障されるのは年金を受け取りはじめるスタート時点の給付水準の話で、七十歳、八十歳と年をとるほどに低下し、40%台に落ち込むことが初めて明らかになりました。

 さらに政府は、二十七日の参院厚生労働委員会で、モデル世帯の給付水準が二〇三一年の九十二歳まで下がり続け、40・2%で下げ止まると小池議員に回答。五割保障どころか本当の下限は四割だったことがわかりました。現行59・3%に比べ32%もの給付ダウンだったのです。

●共働き世帯31%にまで下がる

 モデル世帯以外はもっと深刻です。二〇二五年度受給開始で二十年後の八十五歳の給付水準(一九六〇年生まれで現在四十四歳のケース)で見ると、共働き世帯(夫妻とも四十年間フルタイムで就労)は39・3%から31・7%まで低下します。同様に男子単身世帯では36%から29%へ、五割どころか三割を切ることがわかりました。

 なぜこんなことに。これまでの政府の説明では、年金を受け取りはじめるときの給付水準が二〇〇四年度から二三年度までの期間(スライド調整期間)を通じて15%下がる(マクロ経済スライドによる)ということでした。さらにこの期間が過ぎてから受給開始となる場合、受給開始後に20%も給付水準を下げることが、法案のもとになる年金計算に組み込まれていたのです。

 受給後の賃金スライドによる給付アップを廃止した前回改悪(一九九九年度)のとき、政府答弁を根拠にもぐりこませた仕組みです。20%を超えて給付水準が下がる場合には賃金スライドを復活させる、結果として受給時の給付水準の八割まで下げるということで、「八割ルール」と呼ばれています。今回の法案にも明文の規定がないのに、坂口厚労相は二十七日の委員会答弁で初めて「(八割ルールを)守っていく」と答え、今回の改悪にも組み込まれていることを明らかにしました。重大な改悪ルールなのに、法案提出から二カ月近くも黙っていたことになります。

●保険料「固定」せず積立金でも偽り

 国民年金保険料の連続引き上げは、二〇一七年度から月額一万六千九百円で「固定」するという看板も偽りでした。

 現在、給付費の五年分を超える年金積立金を、〇五年度から九十五年間かけて一年分に減らすという“積立金取り崩し計画”も達成されない――日本共産党の大門みきし参院議員の追及で厚生労働省が認めたのです。「安心」の説明は総くずれの状態です。


副大臣は未納隠し 坂口大臣共同責任

 森英介、谷畑孝両厚労副大臣の国民年金未加入問題。両氏とも衆院で法案審議中に事実を知りながら、衆院通過まで隠していたことがはっきりしました。ただちに公表するように指示しなかった坂口力厚労相の重大責任も浮かび上がっています。

●森副大臣の場合

 二十七日の参院厚労委で森副大臣は、未加入の事実を知ったのは四月十四日午後の委員会開催の直前だと明らかにしました。さらに家人にも聞いて再確認したうえで四月二十三日、中川経済産業相ら三閣僚の未納が発覚した同じ日に坂口厚労相にこれを報告したと答えました。

 それまで、事実を知った日について、十四日以前で「はっきりしない」と答弁をあいまいにしていました。年金担当の副大臣として未納の罰則強化の法案を提出しながら、十四日の委員会では「払っている」と偽り、二十八日の委員会強行採決、五月十一日の衆院通過まで待っていたのです。五月十三日に会見で発表するまで一カ月も隠していたことになります。

 坂口厚労相は、四月十四日、二十三日と森副大臣の報告を受けながら、「報告を受けていない」「調べていると聞いている」と弁明。森副大臣にたいしては、ただちに調査結果を公表するよう求めていなかったことが明らかになりました。

 日本共産党の小池晃議員は、調査を命じながら連休明けまで放置していた坂口厚労相の責任は重大だと批判。「(衆院の採決まで)みんなで隠していたと言われても仕方がない」とのべ、大臣・副大臣の共同責任を追及しました。

●谷畑副大臣の場合

 谷畑副大臣の場合は、社会保険庁の報告で未加入の事実を五月十日に初めて知り、十三日に公表したと説明していました。

 しかし、七日に安倍自民党幹事長の指示を受けた段階で「正直な話、多少未納期間があったと少し認識していた」と記者会見(十七日)でのべていました。この事実を追及されて衆院段階で知っていたのではと野党議員に問われると、「払っているという確信がなかったという認識だ」と言い訳に終始。まともな説明ができない状態に追い込まれています。


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