2004年5月30日(日)「しんぶん赤旗」
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「グリーンピアとかわけのわからない施設に年金財源がムダに使われた。法案以前に国会で徹底糾明してほしい」。埼玉県内で聞いた声のなかで強い怒りの対象となったひとつが、厚生労働省所管の特殊法人「年金福祉事業団」(現年金資金運用基金)の大規模保養基地「グリーンピア」です。相次ぐ破たんの事態を招いた政党、政治家の責任はどこに――。
グリーンピアの損失額について、公明党の坂口力厚生労働相は「全体として三千八百億円になる。取り戻すことは困難と思っている」(二月十二日の衆院予算委員会)などと語りました。そんな巨費が年金保険料から消えました。
見通しもなく建設してきた大規模保養施設に閑古鳥が鳴き、ふくらむ赤字で建設費八十億円の施設をわずか三億円で売却した施設も。
そもそも、グリーンピア建設はなぜ可能になったのか。
厚生労働省に根拠となった法律を聞いてみると、一九六一年十月に成立した年金福祉事業団法(二〇〇一年四月廃止)でした。同法で、年金の被保険者らの「福祉の増進に必要な施設の設置又は整備を促進する」とし、建設が可能になりました。
これに賛成したのは、自民党、民社党(当時)。反対は、日本共産党、社会党(同)でした。
具体的には、「列島改造」を掲げる田中角栄内閣のもとで厚生省(当時)が計画をたてました。七二年八月、自民党の塩見俊二厚相(参院高知地方区)が地元の高知市でグリーンピアの事業構想を発表。七五年七月に「全体基本計画」を公表、小泉首相が厚相を務めていた八八年まで建設が続きました。
日本共産党の小池晃議員が三月九日の参院予算委員会で「偶然にしてはできすぎ」と指摘したように歴代厚相の地元にグリーンピアが建設されました。全国十三カ所のうち、八カ所が厚相経験者の地元でした。
厚生省年金局長としてグリーンピア構想を発案した横田陽吉氏は、七六年十二月の総選挙に自民党公認で宮城1区(当時)から立候補、選挙公報で「大規模年金保養基地(百億円、岩沼に誘致)」と実績宣伝しました。国民の年金で建設したグリーンピア岩沼を自分の選挙に利用したのです。
こうして全国に建設されたグリーンピアは、大赤字を抱え、政府は、二〇〇五年度までにすべて廃止・売却する方針です。こうした事態は当時から予想されていました。
地元広島県にグリーンピア安浦が建設された増岡博之元厚相(広島2区=当時)は、七六年四月七日の衆院予算委員会でグリーンピア事業について、“赤字が出たとしても計画を変更するな”と迫り、当時の年金局長から「地元の要望に沿うように」したいとの答弁を引き出したのです。
小泉首相は、五月十八日の参院厚生労働委員会でグリーンピア事業の破たんについて聞かれ、「役人の責任だといいますが、国会議員が全部欲したんです。そして、この地元にはおれが持ってきた、みんな喜んだんですよ」と答え、平然と開きなおっています。
埼玉県内の社会保険事務所近くで聞いた相談者たちの怒りの声は――。
埼玉県滑川町の信田晃さん(59)は、年金法案についてしばらく迷ってから「しょうがないと思っている」といいながらも、こう語ります。
「国会では、もっと年金の使い道をきちんとすべきじゃないのか。余計な無駄遣いを糾明することをしてほしい。わけのわからない施設(グリーンピア)をつくったり、役人の天下りとか」
同県上福岡市の主婦(50)は「年金法案に賛成、反対という以前の問題で、財源がグリーンピアとか役人の天下り先に使われていたり、国民に負担おしつけるやりかたに大反対。税金どろぼうと言いたい気持ちだ。いま頼りになるのは共産党だと思う。ムネオハウスの追及をやった佐々木憲昭さんの人柄が好きで、がんばってほしい」と話しました。