2004年6月1日(火)「しんぶん赤旗」
自民党は、国会議員の国民年金保険料の未納問題で、全議員の調査を拒否したまま、公明党とともに年金改悪法案の成立をしゃにむに急いでいます。全国紙各紙の国会議員調査も出そろいました。年金問題での国民的点検から見えてきた各党の姿勢は――。
自民党 |
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国民への説明責任より、年金改悪法案成立を優先させて、未納隠しをつづけているのが自民党です。「魔女狩りのごとくだ」(安倍晋三幹事長)などといって、所属議員の納付状況調査さえ拒否。「読売」七十六人、「毎日」八十六人、「朝日」八十一人が未公表ないし未回答議員に数えられています。このなかには、年金改悪法案を審議中の参院厚労委メンバーもいます。「国民はもう、うんざりしている」(参院厚労委・佐々木知子議員)などと幕引きを狙っています。
しかし、公表分だけでも、未納議員は年金改悪法案に署名した七閣僚(うち民間人一人、福田康夫官房長官は辞任)や法案の責任省庁である厚労省の副大臣二人、衆院厚労委員長など法案に直接責任をもつ人物がぞろり。
未納問題で国民に真実を示すよりも、改悪法案成立を優先させるという党略的態度も目立ちました。
最初に三閣僚の未納が発覚したのは四月二十三日。同日の衆院厚労委員会で坂口力厚労相が同二十六日までに全閣僚の年金状況の資料提出を約束したのに、果たさないまま、同委員会で与党単独で年金改悪案を強行採決しました(同二十八日)。
福田官房長官ら四閣僚の未納公表はこの強行採決後。福田氏は四月二十三日に未納の事実を知りながら採決後まで隠していたことを認め、「法案を通すか、通さないか瀬戸際の時」だったことを理由にあげました。森英介厚労副大臣も事実を知りながら一カ月以上も伏せておく悪質さでした。
公明党 |
テレビ番組で評論家から「もっともずるがしこい政党」と批判されたのが公明党。実際、十三人の未納議員を公表したのは、年金改悪法案の衆院通過翌日の五月十二日でした。
しかも、それまでは「国民保険料を完済し、昨年六十歳になり支払いを終えている」(神崎武法代表)などとしていたのに、ふたをあけてみれば、当の神崎代表を筆頭に冬柴鉄三幹事長、北側一雄政調会長と党三役がそろって未納という始末でした。同党の未納議員率は22・8%と公表済みの政党のなかでだんトツです。
神崎代表は、未納問題で民主党の菅直人氏を「他人のことをとやかく言う前にみずから襟を正すことが必要だ」と批判していたこともあり、二〇〇一年の参院選でのテレビコマーシャル「イカンザキ」が繰り返し流されるなど、その責任がきびしく問われました。
ところが、そうした責任を棚に上げ、「ドミノ倒しのような方向をもう変えようという論調が出ている」(東順治国対委員長)として、批判の矛先をそらそうと必死です。
民主党 |
民主党は三閣僚の未納が分かった四月二十三日、全閣僚の公表と引き換えに党の「次の内閣」議員の未納状況を出すと主張。しかし、政府・与党側が公表しなかったため、同二十八日になって「次の内閣」議員の状況を発表しました。このなかで、菅直人代表(当時)の厚相時代の未加入が分かったため、党内が大混乱。結局、岡田克也幹事長が代表に昇格することで決着しました。
全議員調査も、「刺し違え」を狙って自民党に申し入れ。相手が応じないと分かってから、ようやく公表したため、野党の中でもっともおくれて五月十三日となりました。
この過程で、将来の社会保障の財源に消費税増税を充てる道を開く「三党合意」を自民、公明両党と締結(六日)。「国民には、かえって未納問題隠しのための“談合”の印象を与えた」(「東京」七日付)「党内には『自らの延命を図ったものだ』とみて三党合意の撤回を求める意見があり…」(「日経」十日付)などと報じられたように、菅氏が三党合意を未納問題での窮地脱出の手段にしようとしたという見方がもっぱらでした。
日本共産党は五月六日に、衆参国会議員二十九人の国民年金加入状況を発表。全政党ではじめてでした。
この結果、吉井英勝衆院議員一人が保険料未納だった(一九八八年二月―八九年七月、九〇年二月―二〇〇二年十二月)ことが発覚。吉井氏は謝罪し、責任をとって国会での役職(国対副委員長)を辞任しました。
日本共産党が全議員調査を発表したのは、国会議員には年金制度を審議し、決定する特別の政治責任があるからです。そのため、納付状況調査では、国民年金への加入が義務となった八六年四月以降で、かつ国会議員在職中としました。この基準は、その後、所属議員の納付状況を公表した全政党に共通する基準となりました。
党利党略を優先させた自民、公明などと比べ、国民への誠実さを基準にした日本共産党の姿勢は明確です。