2004年6月2日(水)「しんぶん赤旗」
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欧州では、退職後の生活に不安を持っていると答えた人はわずか20%。60%を超す人々が年金制度に満足を表明しています。「年金制度を信頼していない」との回答が70%にも達する日本とは対照的です。
二〇〇三年三月の欧州連合(EU)首脳会議に提出された「適切で持続可能な年金に関する欧州委員会・欧州理事会合同報告」に収録されている当時の加盟国十五カ国での世論調査結果です。
EUでは、二〇〇〇年三月にリスボンで開催された首脳会議での「リスボン合意」に基づいて、それまで加盟国独自に決めることになっていた年金制度をEU共通の課題とする取り組みが進められています。
その中心は、二〇〇〇年に24・2%だった六十五歳以上の人口比が二〇五〇年には49%に達すると見込まれるなか、年金に対する国民の信頼をどう維持するか、という課題です。そのなかで、いくつかの国では年金の負担率と支給率などをめぐって政府と労働組合の間で対立も起きています。
しかし、その改革の基本線は、二〇〇一年十二月のEU首脳会議で決定された十一の共通目標にあります。この共通目標は、年金の妥当性、財政的持続性、近代化の三つの柱の下に整理されており、その第一として、「高齢者が貧困の危険に陥ることなく、公共、社会、文化的な生活に参加することが可能な、品位のある生活水準を享受するよう保障する」ことを各国政府の義務としています。
各国政府はその取り組みを欧州委員会に報告することが義務付けられています。前出の〇三年三月の合同報告は、十一の共通目標に基づいて欧州全体の状況を総括し、今後の課題を提示したものです。
同報告は共通目標の第一の年金生活者の生活水準保障について、最低保障年金の存在を欧州の社会福祉制度の重要な特徴だと指摘しています。その多くは保険料支払い期間や家屋などの財産の有無に関係なく支給されるものです。また、デンマークやオランダには勤労年齢の住民の所得水準に比例した支給制度があるなど、各国で十一共通目標に沿った制度の整備、改革が進んでいることを明らかにしています。 夏目雅至記者