2004年6月3日(木)「しんぶん赤旗」
国民の六―七割が今国会成立に反対している年金改悪法案。小泉内閣、自民、公明両党は「審議は十分行われた」として三日の参院厚生労働委員会で法案の採決を強行、四日の参院本会議で可決、成立させる構えです。しかし、審議のやり方をめぐっても内容をめぐっても「十分」どころか、問題点が次つぎと浮かびあがっています。
改悪案が参院で審議入りしたのは五月十二日の本会議です。厚労委員会での審議はようやく三十時間を超えたにすぎません。
しかも、総予算案や重要な歳入法案の審議にあたって国会法などで義務づけられている中央公聴会は、いまだに開かれていません。年金問題にたいする国民の関心がかつてなく高まるなか、広く国民から意見を聞く公聴会を開くのは最低限の義務です。
与党側も、審議入りした当初は開催に合意していましたが、五月三十一日の参院国対委員長会談で四日成立の方針を確認すると、「自民党内で調整がつかない」と公聴会開催を拒否。国会法や公党間の約束よりも党利党略を優先させる姿勢をあからさまに示したのです。
国民注視の的となっている閣僚、国会議員の国民年金未加入、未納問題について、自民党だけが所属議員の加入、納付状況の公表を「議員個人が判断すべき問題」(小泉首相)として拒否を続けています。
国会議員の年金未納、未加入が問題となるのは、公的年金の法律を決める権限をもっている特別の責任を負っているからです。国民年金への加入が義務化された一九八六年四月以降の国会議員在職中の納付状況の公表は、政党として最低限の責務です。
日本共産党は五月六日に他党に先駆けて国会議員の加入、納付状況を公表し、自民党を除く各党も公表しています。
しかし、与党の公明党が公表したのは法案の衆院通過を強行したあとの十二日。テレビの評論家から「もっともずるがしこい政党」と批判されています。未納隠しをつづけて、国民に負担増、給付減をおしつける自民党には、年金の法律を決める資格はありません。
年金改悪法案の今国会成立を先頭に立って推進してきた公明党は「年金改革遅れれば赤字拡大」(公明新聞五月三十一日付)と宣伝。廃案にしたら年金財政に穴が開くなどと、国民を脅しています。
国民に大幅な負担増・給付削減を押しつける年金改悪法案を強行することこそ、年金への信頼をなくし、制度を土台から掘り崩すことになります。
もともと大企業のリストラ支援などで、年金の支え手を減少させ、年金財政に穴をあけてきたのは小泉内閣・与党です。厚生年金への青年の加入が激減したことで、厚生年金収入は二〇〇〇年度、〇一年度の二年間だけで約六兆円も見通しを下回っています。
しかも、公明党は自民党とともに、法律に明記された〇四年からの国庫負担の二分の一引き上げを先送りました。国庫負担引き上げを五年間も先送りしたことには口をつぐみながら、「年金財政に穴が開く」とはよくいえたものです。
「年金百年安心」の宣伝が偽りだと国民に知られたら、今度は「放置すれば穴が開く」と脅しにかかる―公明党の本性があらわれています。
改悪案を廃案にし、国民の年金制度への信頼を取り戻すことこそ求められています。