2004年6月3日(木)「しんぶん赤旗」
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「給付水準を『50%以上確保』して、『暮らせる年金』を保障」(公明党パンフ)―政府・与党が最大の“売り”にしていたこの看板が偽りでした。
「50%確保」の対象としていたのは、夫が四十年サラリーマンで妻が専業主婦の「モデル世帯」。この「モデル世帯」は全体からみればごく一部ですが、その世帯ですら「50%確保」は六十五歳時点にすぎなかったのです。「受給開始後の年金額は、六十五歳時点よりも低い水準になる」(坂口力厚労相)と認めたのは、五月十二日の参院本会議が最初でした。
実際の給付水準は「50%」どころか40・2%まで下がります。現行で月二十三万六千円の年金が、二〇三一年には十六万円(賃金、物価は〇四年度の水準で計算)になってしまうのです。(グラフ)
共働き世帯は31・7%、男子単身世帯は29%まで下がり、三割をも割り込んでしまうことが明らかになりました。
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保険料を十年以上連続で引き上げるかわりに「上限を固定」し、「これ以上は絶対に引き上げません」(自民党パンフ)―この説明もウソで固めたものでした。
衆院の審議で、現行月一万三千三百円の国民年金保険料について、「平成十七年度(〇五年度)から毎年度二百八十円ずつ引き上げられ、平成二十九年度(一七年度)以降の保険料額は一万六千九百円とする」(坂口厚労相)と説明していました。これだけでも大変な負担増なのに、さらに賃金、物価の上昇に連動した引き上げが加わり、厚労省の試算で一七年度は二万八百六十円、二七年度には二万五千六百八十円になることが明らかになりました。(グラフ)
小泉首相は「物価や賃金が上昇していけば、実際に徴収される保険料の名目額が上がっていくのは当然のこと」と開き直りましたが、「当然」どころか、今回の改悪案で初めて盛り込まれた仕組みです。
国民に「上限なき」負担増を押しつけることへの痛みは、まったく感じられません。
今回の改悪案による給付水準引き下げは、満額受給で月六万六千円、平均受給額で月四万六千円の国民年金にまで及びます。
すでに年金を受け取っている人は、前回の法「改正」(〇〇年四月実施)で賃金スライドが廃止され、物価スライドになったうえ、新たに導入される「マクロ経済スライド」(少子化の進行、寿命が伸びる影響で給付水準を抑制する仕組み)によって物価上昇率から0・9ポイント差し引かれます。
三一年度には、満額受給は六万六千円が四万五千円に、四万六千円は三万二千円まで、三割もカットされてしまうのです。憲法二五条の生存権をさらに踏みにじるものです。
「これでどうやって生活しろというのか」という日本共産党の追及に「公的年金だけで全部生活費を見るものではない」と平然とのべる小泉首相。「百年安心」「暮らせる年金」というのも、まったくの偽りだったのです。
改悪案では、前回の法「改正」時に〇四年度までの実施が明記された基礎年金の国庫負担割合の三分の一から二分の一への引き上げについて、〇九年度まで先送りしました。
そのうえ、引き上げの「財源」として、〇七年度を目途にした「消費税を含む抜本的税制改革」=消費税率引き上げに道を開くものとなっています。
●保険料の連続引き上げ、給付引き下げが経済、雇用を悪化させるのではないか
●増大する厚生年金の未加入者、未加入事業所、国民年金の未加入者など「空洞化」への対策
●厚生年金保険料は経済動向や少子化の想定が狂えば18.3%を超えてさらに引き上げられる可能性
●法案の前提となっている物価や賃金の上昇率、出生率の見通し、根拠が不明確
●年金積立金が2008年から全額自主運用に。株投資を続け、損失が出ない保証はあるのか