2004年6月4日(金)「しんぶん赤旗」
政府が年金改悪法案の中心ポイントにした「マクロ経済スライド」について、法案提出の最高責任者である小泉首相自身まったく知らなかった――。三日の参院厚生労働委員会では、首相答弁のでたらめぶりが改めて発覚し、委員会室は騒然となりました。
この日の委員会審議でも、新しい改悪ルールとして「マクロ経済スライド」が法案にもりこまれ、厚生年金の給付水準が現行59・3%からどんどん引き下げられていくことが問題になりました。日本共産党の池田幹幸議員は、国民年金(基礎年金)にも「マクロ経済スライド」が適用されることで、老後の基礎的消費支出さえカバーできない給付水準になる新しい試算を紹介。質問後、マスコミ記者が試算の根拠を問い合わせてくるなど、給付削減による国民生活への影響は年金審議の争点になってきた問題です。
午後からの総括質疑で民主党議員と小泉首相との間でやりとりになりました。
マクロ経済スライドによって「物価があがっても年金はあがりません。総理ご存じでしたか」と質問すると、小泉首相の答弁は「年金には物価スライドがあるんですよ」。
マクロ経済スライドになると、物価上昇分の給付アップができなくなります。厚生年金、国民年金の加入者数(被保険者数)の減少率、受給期間の伸び率(平均余命の伸び)の二つあわせて年平均0・9%とし、物価上昇率から差し引いて給付水準を落としていく仕組みです。
物価上昇率が年1%の場合、本来給付も1%上がるところを0・9%引いて0・1%の伸びに落とすのです。それを物価スライドがあるから給付も大丈夫と胸をはる首相――。
「物価スライドとマクロ経済スライドということは、同じですか、違いますか」と聞かれて首相答弁が「経済全体のマクロ的観点からいえば年金とは違います」。
とんちんかんな答弁に野党席からいっせいに「わかってないんだ」と、抗議の声があがりました。さらに、「マクロ経済スライドと物価スライドとまったく意味が違う。どう理解しているか」と問われると、「それは専門家に聞いてください」と逃げる首相。
見かねて議事進行役の国井正幸委員長(自民党)が坂口力厚労相を指名。そのあと、再度指名された首相ですが、「そういう専門家の意見を聞きながらやっている」「マクロ経済スライドという定義とか、そういう点については私が答えなければならないことなのか」と必死の弁明。しまいには「どうしても私が答えなくちゃいけないですか」と居直りました。
「マクロ経済スライド」は法案のキーワードで、“保険料を上限で固定・給付削減には下限”という二枚看板の根拠にしてきた改悪ルールなのに、法案の提出者でいながら、全く知らなかったことがはっきりしました。