2004年6月4日(金)「しんぶん赤旗」
政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)は三日、「骨太の方針」(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」)を決めました。小泉内閣になって第四弾となる方針です。いったい日本経済をどこに導こうとしているのでしょうか。
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「新たな飛躍の段階を迎えつつある」――。「骨太の方針」第四弾は、小泉「構造改革」の成果を誇ってみせます。
確かにアメリカや中国のおう盛な海外需要を背景にして大企業の収益は伸びています。この大企業のもうけを後押ししてきたのが、小泉自・公内閣です。
二〇〇三年度には、設備投資・研究開発減税をおこない約一兆円も減税。リストラをすればするほど税金をまけてやる「産業再生法」の認定対象も拡大しました。
しかし、“大企業がもうけを増やしても国民経済は豊かにならない”というのは政府統計からも明らかです。
企業の利益が伸びても、人件費は抑制されたままです。〇四年一―三月期の企業経営のもうけを示す経常利益は、前年同期比24・6%も増加。一方、人件費の伸びは同2・3%増と低迷したままでした(法人企業統計調査)。政府が自慢する失業率の「低下」も、その中身をみると、不安定雇用が拡大しているのが実態です。
いまでは、雇用者の三人に一人が派遣や契約社員の非正規社員です(総務省の労働力調査)。労働者派遣は今年三月に製造業務にまで拡大され、製造業企業の四割が積極的に活用すると回答(「ものづくり白書」)しています。不安定雇用は拡大の一途です。
また、大手銀行には公的資金を湯水のように注ぎ込む一方で、中小企業の多くを「不良債権」扱い。「貸し渋り」「貸しはがし」が横行し、小泉内閣になってから銀行の中小企業融資は約五十四兆円も減少しました。(日銀調査)
「骨太の方針」第四弾は「中小企業の状況は厳しい」と指摘せざるをえませんが、これは小泉内閣がもたらした「構造改革」の結果にほかなりません。
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「官から民へ」「国から地方へ」の「改革」の中身は、郵政民営化、規制改革・民間開放の推進、「地域の真の自立」です。
四月の郵政民営化中間報告は、〇七年の民営化を最大課題に据えました。庶民が気軽に利用できる郵便貯金・簡易保険の政府保証を廃止して、「民間と同等」とすることなどを明記。「公正な競争を確保した上での民営化を強く望む」(〇二年の全国銀行協会の「考え方」)という大銀行の要求を丸のみした形です。国民の関心が高い郵便局網の見直しなど組織形態への言及は、参院選後の最終報告で示されます。
国・自治体が所管する事業を「民間に移管」する方針では、民営化、民間譲渡、民間委託などの形態が打ち出されています。とりわけ、「需要と雇用の拡大にもつながる分野」として医療、福祉・保育、教育といった分野をあげ、「なるべく早期に改革案を取りまとめる」と強調しました。本来政府が責任を負うべき社会保障や教育を民間に“切り売り”しようとする危険な方針です。
地方財政「改革」は(1)国庫補助負担金の廃止・縮減(2)地方交付税の縮小(3)地方への税源移譲を「三位一体」で進めるもの。今回、〇五―〇六年度に行う国庫補助負担金の削減規模を「三兆円程度」、国から地方自治体への税源移譲を「おおむね三兆円規模」と明示し、「改革」の全体像も今年度中に決定するとしています。国の財政赤字が自治体に押し付けられ、「真の自立」どころか日本の地方自治が大きく揺らぐのは避けられないでしょう。
「骨太の方針」第四弾は、「経済社会の活性化、持続可能な社会保障制度の確立」の視点に立ち、「〇四年度与党『税制改正大綱』も踏まえ、相互に関連する税制改革案を包括的かつ抜本的に検討し、重点強化期間(〇五、〇六年度)内を目途に結論を得る」と宣言しました。
同方針が「踏まえる」とする自民、公明両党の「税制改正大綱」は、「〇七年度を目途に、消費税を含む抜本的税制改革を実現する」としていました。
「結論」に、消費税増税が含まれてくることは明らかです。
年金給付減などで、当然必要な社会保障関係費さえ絞り込んだ今年度予算(三月二十六日成立)。二〇〇〇年度のデータでも、国民が納めた税金のうち、社会保障に使われるのは約三割にすぎません。しかし、同方針は、社会保障関係費の抑制が「我が国の財政運営上の最大の課題である」とまで言い切り、来年度予算編成でも、さらに削減を図ることを盛り込んでいます。
社会保障抑制で国民に悲鳴をあげさせ、消費税増税に導こうというのが、小泉内閣の作戦です。
公共事業や軍事費の無駄を省き、大企業にも応分の負担を求めれば、消費税増税に頼らなくても社会保障の財源は生み出せます。そのことは、ヨーロッパ諸国と比べても、低い日本企業の税と保険料の水準をみても明らかです。
ところが、経済財政諮問会議での議論では、奥田碩日本経団連会長ら四人の民間議員らは繰り返し、法人税減税を含む「抜本的税制改革」を求めました。大企業の負担をさらに軽減せよという要求です。
小泉「改革」がめざす方向は、財界・大企業が求める大企業のさらなる税と保険料の負担軽減のための財源づくりとして、消費税増税の道筋をつけることにほかなりません。