2004年6月4日(金)「しんぶん赤旗」
小泉内閣がこの四月からスタートさせた国立大学の法人化をきっかけに、国立大はもちろん、公立・私立大学を含めた、学費のいっそうの値上げ問題が、新しい局面を迎えています。いま、「学費値上げ反対・大学予算増額」をめざすたたかいを、発展させることが求められています。
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大学の初年度納付金(入学金、授業料など)は、国公立大学で八十万円、私立大学平均で百二十万円をこえ、「高い学費を何とかして」の願いは、学生、父母や高校生に共通です。家計支出の伸び率に対し、国、私立大学授業料の値上げ率は大きくなっています(グラフ参照)。
高学費の負担は、すでに限界です。学生からは、「学費や生活費を得るためのバイトで疲れ、授業に出られない」などの声が噴き出しています。
大学生協連の調査では、親元を離れ生活する学生の食費(二〇〇三年)は、月約二万五千円と、五年連続の減少です。これは一九八〇年(約二万九千円)以前の水準で、高学費は学生の健康をも損ねていると言えます。
親にとっても切実です。親元を離れ私大に通うと、生活費を含め卒業まで約一千万円かかるという現実は、住宅ローンの計画を左右するほど深刻な影響を、父母の家計に与えています。
学費や教育費の負担増は、憲法や教育基本法が定める、「教育の機会均等」を損ねています。
子どもを大学に通わせている家庭は、収入に関係なく同額の学費を払わなければなりませんから、所得の低い家庭の負担は深刻です。高学費は、「意欲と能力があれば、家庭の経済事情で差別されることなく、希望する教育を誰もが受けられるべきだ」という「教育の機会均等」の理念を掘り崩しています。
日本の高学費は国際的にも異常です。ドイツ、フランスの学費は基本的に無料、アメリカでも学生の六割を占める州立大学の学費は四十七万円です。奨学金も、日本は貸与制(返還が必要)が基本ですが、アメリカ、ドイツ、フランスは返還不要な給付制を柱にすえています。この大もとには、政府が、大学にたいする国の財政責任を果たしていないという問題があります。(サミット諸国の財政支出は別表)
税金の使い方を国民のくらし第一に転換し、大学関連予算を欧米並みをめざして大幅に増額し、学費負担軽減を通じ、お金の心配なく大学で学べるようにすべきです。
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ところが小泉内閣は、学生・父母の願いに背をむけ、いっそうの学費値上げをもたらす道をすすんでいます。
小泉内閣は、四月から実施した国立大学法人化に伴い、国が各大学に交付する予算(運営費交付金)を毎年減らす計画をすすめており、五年間で最大四百五十億円の削減が見込まれています。各国立大の財政は、国からの資金と大学ごとの自己収入(授業料など)が柱なので、計画がすすめば、大学には学費値上げが迫られます。
国立大の授業料は、これまで国が一律に決めていましたが、法人化後は、文科省が「標準額」を定め(〇四年度は五十二万八百円)、その110%を上限に、各大学が学部ごとに決めることになりました。
財務省は、「標準額」の値上げをねらっています。今年発足した法科大学院の授業料は、国立大法人で八十万四千円という高額です。来年度以降の国立大でのいっそうの学費値上げや、医学部をはじめとする学部別授業料の導入が、今後大きな問題にならざるを得ません。
公立大学でも、昨年七月に成立した地方独立行政法人法(自治体の判断で公立大の独立行政法人化を可能にした法律)のもと、法人化や統廃合をめぐる検討が加速しています。焦点の一つは、「自治体の公立大への予算と、学費をどうするか」です。
私立大学の高学費は、すでに入学金・授業料返還訴訟をはじめ、社会問題化しています。私大の経常費にたいする国の助成金の割合は、参議院文教委員会付帯決議(一九七五年)が「できるだけ速やかに二分の一とするよう努める」としたにもかかわらず、八〇年の29・5%をピークに現在12%台にまで下がり、私大学費の高騰に拍車をかけています。国公立大の学費が、法人化にともなって値上げされれば、私大学費をいっそう押し上げる圧力が加わることが強く懸念されます。
(日本共産党青年・学生委員会)
(つづく)