日本共産党

2004年6月5日(土)「しんぶん赤旗」

年金改悪強行の自公

“追及怖い”  質問奪う


 国会議員の質問権をはく奪して、三日の参院厚生労働委員会で年金改悪法案を強行採決した自民、公明。首相出席の質疑で、三人の議員の質問を残したまま質疑を打ち切って採決を強行するという前代未聞の暴挙でした。国民に長期にわたって保険料引き上げ、給付減を押しつける法案のひどさとともに、やり方のひどさも横暴極まるものです。


■与野党合意踏みつけ

写真

与党の強行採決を見届け、委員会室を後にする小泉首相(中央)、坂口厚労相(同左)=3日午後、参院厚生労働委

 自公による強行採決は三日午後三時七分、公明党議員の質問が終わる直前でした。直後に日本共産党の小池晃政策委員長の質問が控えていました。

 突然、自民党の伊達忠一議員が立ち上がって「質疑打ち切り動議」を読み上げ、議場騒然となった委員会室で、国井正幸委員長(自民)の声がまったく聞こえないなか、与党議員が挙手を繰り返し、「採決」を強行。与野党が合意していた審議日程を一方的に打ち切ったのです。

 「ルールを守っていただきたかった。怒りを通り越して何と申し上げていいのか…」とのべたのは、質問権を奪われた無所属の西川きよし議員。首相指名で小泉首相に投票してきた議員でさえ、認めることができない暴挙でした。

 ところが、小泉首相は「会期末になると仕方ないんですかね」とうそぶきました。国会議員の質問権を封殺し、議会制民主主義を踏みにじったことにたいする反省のひとかけらもありません。

■自民議員も説明不能

発言

 強行採決後の三日の参院議院運営委員会理事会。改悪案の本会議採決を求めた自民党議員は、日本共産党の井上哲士議員ら野党側から「質問権を奪ったまま、本会議は認められない」「なぜ質問権を奪ったのか」と追及されると、「一般論として説明がつかない」と、非を事実上認めざるを得なくなりました。

 「説明のつかないやり方を認めるのか」「質問権封殺の採決を認めれば議運も同罪になる」と野党側がたたみかけると、とうとう答えられなくなる始末です。

 強行採決を推進した国井委員長も「手続き上は致し方ない」と正当化しながらも、「共産党、社民党の質問をしてからの方がよかったかなとの思いはある」(三日の記者会見)と、言わざるを得ませんでした。

 「とても十分とはいえない審議のすえの、数に物を言わせた乱暴な採決を遺憾に思う」(「東京」四日付社説)、「国民が納得できる説明がないまま、強行採決したことで、年金不信は一層深まったと言わざるをえない」(「毎日」四日付社説)。自公の暴挙にたいし、マスコミ各紙も、いっせいに批判しました。

■官房長官は開き直り

 「(野党議員は)本当に質問したいと思ったのにできなかったのかどうか、調べないと分からない」。細田博之官房長官は強行採決直後の三日の会見で、質問権封殺を反省するどころか、こう開き直りました。

 質問権をはく奪された小池氏と社民党の福島瑞穂党首は、直ちに官房長官に抗議し、「われわれの質問により政府案の問題点がいっそう浮き彫りになることを恐れ与党が採決を強行したという事実を全く正反対にゆがめるもの」と批判し、撤回と謝罪を求めました。

 小池氏の質問権が奪われたのは、今回が初めてではありません。二〇〇二年七月、健康保険のサラリーマン本人負担を二割から三割に引き上げる医療改悪法案を強行採決したときも、公明党議員の質問の直前に質疑打ち切り動議が出され、小池氏の質問を封じました。医療改悪や年金改悪など、自公の悪政に正面から対決する日本共産党の質問を、政府・与党がいかに恐れているかが、ここに示されています。

審議すればするほど法案の偽り明らかに

グラフ

 法案も、政府説明の偽りが次々と明るみに出て、徹底審議の重要性がましているときでした。

 “保険料引き上げは上限で固定”“給付は下限の50%より下げない”。この「二枚看板」は偽りでした。国民年金保険料(現行月額一万三千三百円)は、上限の一万六千九百円を超える引き上げとなり、法案にある保険料「固定」期間に入っても賃金・物価上昇を反映して上がり続けることが明らかになりました。

 モデル世帯(夫が四十年加入で妻は専業主婦)の厚生年金の給付50%確保(現役世代の平均収入比)も、政府が保障しているのは年金を受け取りはじめたときのこと。受給後はどんどん下がりつづけ、厚生労働省が本当の下限は40%だったことを説明したのは五月最後の法案審議(二十七日、厚生労働委員会)でのことです。

 「百年安心」の二枚看板の崩壊を食い止めようと言い訳に回っていた公明党ですが、三日の総括質疑にたった遠山清彦議員は「ごまかしとはいえないが、配慮に欠けた」と表明。答弁した坂口力厚労相も「プレゼンテーション(説明)が十分でないところは率直に反省しなければならない」とのべざるをえなくなりました。しかし、説明不足への「反省」を口にした質問直後の抜き打ち採決で審議の機会を奪ったのですから、ウソの上塗りです。

 「二枚看板」の“保険料上限固定”“給付下限固定”を今後、段階的に実施するために導入される仕組みが「マクロ経済スライド」です。今後、物価上昇に応じた年金給付の引き上げをできなくする制度です。これによって月額二万円、三万円という低額の国民年金まで引き下げられることになりました。憲法で保障された生存権を奪う重大な改悪です。それを小泉首相がまったく知らなかったことが三日の総括質疑で発覚しました。

 首相は「総理大臣が答えなきゃならないことなのか」と居直り、官僚があわてて手書きの答弁書を手渡し、「マクロ経済スライドとは」と棒読みしてきりぬける始末。法案提出の最高責任者が、肝心要の中身も理解せず法案成立を急がせるという前代未聞のでたらめぶりがはっきりしました。


 マクロ経済スライド 厚生年金、国民年金の加入者数(被保険者数)の減少率、受給期間の伸び率(平均余命の伸び)の二つあわせて年平均0・9%(スライド調整率)とし、物価上昇率から差し引いて給付水準を落としていく仕組み。


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