2004年6月6日(日)「しんぶん赤旗」
五日成立した年金改悪法は国民負担増と給付減が柱です。その中身と問題点をみると――。
保険料引き上げ |
国民年金保険料は、いまは月額一万三千三百円です。来年四月から十三年連続で、毎年月額二百八十円引き上げられます。政府は、衆院での審議段階では「二〇一七年四月の一万六千九百円が上限で、ここで固定される」と説明してきました。
ところが、これは偽りでした。実際の金額は賃金上昇に応じて上がり、二〇一七年度は二万八百六十円、二七年度は二万五千六百八十円、三七年度は三万千六百十円となります。この事実を、坂口力厚生労働相は五月十二日の参院本会議の質疑で初めて認めました。
国民年金はいまでも負担が重く、主に経済的理由による納付率の低下が問題となっています。保険料の際限のない引き上げは、年金の空洞化をさらにひどくします。
厚生年金保険料はいま年収の13・58%(労使折半)。今年十月から十四年連続で毎年0・354%引き上げられ、一七年度には18・3%となります。サラリーマンの平均年収五百七十万円の場合、年に一万円ずつ保険料負担が増えることになります。政府は18・3%で固定するといいますが、法案の前提条件が崩れればさらに上がる可能性があることを認めました。
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給付引き下げ |
給付について政府は「現役世代の収入の五割を確保する」と説明してきましたが、これも偽りでした。五割が確保されるのは、四十年間厚生年金に加入したサラリーマンと専業主婦のモデル世帯の場合でも、受給開始時のみ。年々比率が下がり、すぐに五割を下回ります。モデル世帯以外は二―三割台まで落ち込みます。
国民年金の給付は、いまでも満額で月六万六千円、平均四万六千円という低水準です。これも実質額が一律に引き下げられます。これでは基礎的な消費支出すらまかなえません。国民の生存権(憲法二五条)を脅かすものです。
消費税増税に道 |
いま、基礎年金(国民年金)の給付費用の三分の一は国の負担でまかなわれています(残り三分の二は保険料)。国会は、国の負担の割合を二分の一に引き上げることを一九九四年に全会一致の付帯決議で確認。前回二〇〇〇年の年金「改革」の際には「二〇〇四年までの間に、安定した財源を確保し…二分の一への引き上げをはかる」と法律の付則に明記しました。ところが、今回の法案では、二分の一引き上げ時期を「二〇〇九年度までのいずれかの年度」とし、事実上先送りしました。
与党は〇九年度までに、年金生活者への増税、所得税定率減税の廃止など、庶民増税を次々に実施する計画です。さらに〇七年度には「消費税を含む抜本的税制改革を実現する」ことで、自民、公明両党が合意しています。