2004年6月6日(日)「しんぶん赤旗」
国民世論に背を向け、自民、公明両党が五日の参院本会議で押し通した年金改悪法。審議入りからわずか二カ月余、短い審議のなかでも、日本共産党国会議員団は、「百年安心」という政府案の偽りの看板をつき崩すなど論戦をリード、国民が安心できる改革案を示してきました。
山岸嘉昭記者
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「出直せ」の世論つくる |
「政府・与党がアピールしてきた『百年安心』『負担の上限設定と現役世代の50%以上の給付水準確保』といった金看板は、次々とメッキがはげ落ちた」(「産経」四日付)――。突破口となったのは、五月十二日の参院本会議での日本共産党の小池晃政策委員長の質問です。
政府が一万六千九百円で「固定される」と説明してきた国民年金保険料が、実際には「物価や賃金が上昇すれば保険料は上がっていく」(小泉純一郎首相)ことにより、二〇一七年度で二万八百六十円になり、以降も上がりつづけることが判明。「現役世代の50%を確保」するとしてきた給付水準も「受給開始以降の年金額は、六十五歳時点よりも低い水準となる」(坂口力厚労相)ことが明らかになったのです。
翌日付の各紙は「厚生年金給付 『5割割れ』認める 厚労相が試算示す」(「朝日」)などといっせいに報道。同月十五日放映の日本テレビ系「ウェークアップ!」も小池質問を紹介しながら「『百年安心』どころか『百年不安』だ」(司会の桂文珍氏)と論じました。
小池氏は、この事実を衆院で隠し続けた政府の責任を追及。政府も「聞かれれば答えた」(小泉首相)、「何パーセント(に下がる)かは言わなかった」(坂口厚労相)と、国民に説明してこなかったことを認めざるをえませんでした。
共働きや男子単身、女子単身の各世帯でも、受給開始とともに給付水準が下がり続け、男子単身世帯にいたっては29%に落ち込むことも、日本共産党の質問で明らかになりました。マスコミ各紙も「85歳時の単身男性 現役の3割切る」(「日経」五月二十八日付)と、大きくとりあげました。
「百年安心」の根拠が崩れるなか、世論調査では、年金改悪法案を「今国会で成立させるべきでない」が70%(「朝日」五月十七日付)を占めるなど、六、七割の国民が“今国会成立反対”を求める状況が生まれ、政府・与党は追いつめられました。
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安心できる政策を提案 |
日本共産党は、政府案の偽りを追及する一方で、現在も将来も安心できる年金政策を提案してきました。
憲法二五条の「生存権」を保障するため、全額国庫負担でまかなう「最低保障年金制度」をつくることが大きな柱です。第一歩として、最低保障額を月額五万円とし、そのうえに支払った保険料に応じて上乗せし、無年金をなくし、低額年金の底上げをめざします。
年金財源をめぐっては、「消費税を含む抜本的税制改革」(与党税制改革大綱)を主張する自民・公明と、3%の「年金目的消費税」を掲げる民主党が消費税増税を競い合いました。
日本共産党は、年金財源を消費税に求めるのは「所得の低い人たちの生活と中小零細企業の営業を痛めつける」一方、大企業にとっては「年金保険料の二分の一の事業所負担を回避できる好都合な仕組みだ」(山口富男議員、四月九日の衆院本会議)と批判。財源は、道路特定財源の一般財源化、無駄な公共事業、軍事費の削減など歳出の見直し、大企業向け優遇減税を改めるなど、歳入面の民主的改革でまかなうことを提案しました。
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自民未公表 公明後出し |
閣僚や国会議員の国民年金未加入・未納問題で日本共産党は、国民年金の加入が義務付けられた一九八六年四月以降の加入・納付状況について調査。五月六日に他党に先駆けて所属議員二十九人について公表しました。「年金制度を決める国会議員には特別な責任がある」との立場からでした。
その後、民主、社民、公明の各党も、八六年度以降の在職期間中という、同じ基準で公表しました。
自民党は、所属議員の年金加入、納付状況について「議員個人が判断すべき問題」(小泉首相)としていまだに公表していません。同党所属の森英介、谷畑孝両厚労副大臣は、法案の衆院通過後まで未加入を隠しつづけ、坂口厚労相もこれを放置していました。
公明党は、法案が衆院を通過した翌日の五月十二日に公表。神崎武法代表、冬柴鉄三幹事長ら、党三役を含め十三人の未納が判明しました。公表を衆院通過後まで先延ばししたことに「もっともずるがしこい政党」とマスコミと世論の批判が集中しました。
国民に対して誠実な態度をとった日本共産党と、党利・党略を優先させた自民、公明との違いが鮮明になっています。